東宮山古墳(読み)とうぐうさんこふん

日本歴史地名大系 「東宮山古墳」の解説

東宮山古墳
とうぐうさんこふん

[現在地名]川之江市妻鳥町 山口

川之江・伊予三島両平野の扇のかなめをおさえ、ひうち灘への展望もよい法皇ほうおう山脈の内海斜面の間に残る標高八七メートルの独立山丘上のほぼ頂上に、春宮とうぐう神社と並んで東宮山古墳の墳丘がある。

東宮山の名や春宮大明神の呼称がいつ始まったかは明らかでない。当墳は古墳中期末ないし古墳後期初頭の横穴式石室の県内での顕著な例で、墳丘径約一四メートル、高さ約三メートル、石室平面は羽子板状で玄室長さ四・三三メートル、奥壁幅一・九五メートル、前幅一・八〇メートル、奥壁高さ一・七〇メートル。天井石七枚、壁面は小口積、玄門柱石の外側から二枚石で閉塞羨道の長さ・幅ともに短く、内海方面に口を向けている。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「東宮山古墳」の意味・わかりやすい解説

東宮山古墳 (とうぐうさんこふん)

愛媛県四国中央市の旧川之江市妻鳥(めんどり)町に所在する円墳。東宮山と呼ぶ独立丘陵上にあり,直径14mを測る。北西の平野側に開口する横穴式石室を備える。石室は両袖式であり,4.33m×1.95mを測る玄室に,短い羨道(せんどう)がつく。1894年に遺物が取りだされ,翌年,陵墓参考地に指定された。宮内省に移された出土品として,鏡,冠,耳環,玉類,鈴,衝角付冑(かぶと),柄頭(つかがしら),馬具須恵器土師器(はじき)などがある。古墳の年代は6世紀前半にあたる。鏡は長宜子孫(ちようぎしそん)内行花文鏡であり,この種の中国鏡の副葬は,6世紀代の古墳では,異例に属する。柄頭は大小2個の金銅三葉環頭である(大刀たち))。これが朝鮮に多い大小2刀からなる複合刀であるとすれば,日本では稀有の例である。また,4個を数える馬鐸(ばたく)は,2組の同笵(どうはん)品からなる。なお,宮内庁書陵部が保管する東宮山頂出土の銅矛は,箱式石棺の出土品らしい。
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