室町時代の説話集。一条兼良著。1巻または2巻。兼良の30歳代(1431-41)ころの著作かともされるが未詳。おもに《古事談》《十訓抄》《大鏡》などの先行文献により抄録した本朝の説話78(77,75とも)話からなる流布本と,それに《十訓抄》より40話ほか1話を加えた増補本とがある。全体を音楽,草木,鳥獣,人事,詩歌,政道,仏法,神道,礼儀,好色,興遊の11項目に分類するが,《古今著聞集》など先行説話集の項目順序とも,中国の類書のそれとも異なり,本来,項目を適当に設定したうえで諸文献より説話を採録したメモ風のものであったと思われる。類題説話集編纂の意図があったかは不明。仏法類の比重が大きく全体に不均衡だが,類似説話の重複を避け素材も変化に富む。なお増補本は,祖本の所在や説話の後に付されている注記からみて,良鎮(兼良の息,曼殊院門跡)の手になった可能性もある。写本の数も多く,《群書類従》にも入る。
執筆者:赤瀬 信吾
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…読書の際,興味をひいた条を抜抄した抄録集のようなものも日本では随筆に含めており,この種の文献も決して少なくない。〈随筆〉の2字を書名に明確に使用している文献は,一条兼良(1402‐81)の著とされる《東斎随筆》(1巻,成立年不明)が最初といわれる。しかし内容は抜抄した短文の説話を集めたもので,編者は私的な書留という心持であったと推定される。…
※「東斎随筆」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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