おもに「接骨院」「整骨院」などと称される施術所において、骨・関節・筋(きん)・腱(けん)・靭帯(じんたい)などの運動器に対する外傷により発生した、骨折・脱臼(だっきゅう)・打撲・捻挫(ねんざ)・挫傷といった急性の損傷に対し、整復、固定、後療法といった施術(柔道整復術)を業として行う者。または、その国家資格。
1970年(昭和45)に施行された「柔道整復師法」の規制を受け、「医師である場合を除き、柔道整復師でなければ、業として柔道整復を行ってはならない」と、業務の独占が規定される一方で、「外科手術や薬品の投与等の禁止」「医師の同意を得た場合のほか、脱臼又は骨折の患部に施術をしてはならない。ただし、応急手当をする場合は、この限りでない」といった、施術の制限に関する条文がみられる。その他、「柔道整復師法施行規則」「柔道整復師法施行令」といった省令、政令により、資格および業に関してのさまざまな細則が定められている。
その施術(柔道整復術)は柔道(古くは柔術)における「活法」(人を傷つけ、ときには殺(あや)める「殺法」に対し、治療や蘇生(そせい)を目的とするもの)に由来するとされるため、資格に「柔道」の名がつく。このように、特定の武道(スポーツ)の名称がつく施術が、幾多の変遷を経て国家資格へと昇華したケースは世界にも類をみないものである。その歴史は古く、現存する日本最古の医書である『医心方(いしんほう)』(984年、丹波康頼(たんばのやすより)著)にも、「巻十八 外傷篇」に、その源流の一端がうかがえる。江戸時代には、多くの柔術家、医家の先人たちにより中国医学、西洋医学が取り入れられ、「ほねつぎ」「整骨術」などと称されて発展し、名倉直賢(なぐらなおかた)(1750―1828)、高志鳳翼(たかしほうよく)(生没年不詳)らにより「接骨術」として体系化された。
明治時代に入ると、政府の方針により「接骨業」は一時衰退するが、1920年(大正9)に内務省令により「柔道整復術」として公認され、戦後の混乱期を経て、1970年に「柔道整復師法」が成立、さらに1988年、同法の大改正を経て、現在に至る。この法のもと、1991年(平成3)には厚生労働省により法定医業類似行為(あん摩マッサージ指圧・はり・きゅう・柔道整復)の一つとされ、また、2001年(平成13)には世界保健機関(WHO)に日本の伝統医療者(Judo therapist)として報告され、世界的に認知された経緯をもつ国家資格であり、いわゆる「整体師」などの民間資格とは異なる。歴史的な背景から、俗に「接骨医」、「整骨医」とよばれることがあるが、医師法第18条には、「医師でなければ、医師又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない」と規定されており、これらは不適切な呼称である。
柔道整復師の国家資格は、厚生労働省管轄または文部科学省管轄の養成施設(専門学校、短大、大学など)で、3~4年にわたり解剖学、生理学、運動学、病理学概論、衛生学・公衆衛生学、一般臨床医学、外科学概論、整形外科学、リハビリテーション医学、柔道整復理論、関係法規などを学び、柔道整復師国家試験に合格することで得られる。その後合格者の申請により、厚生労働省の柔道整復師名簿に登録することによって、柔道整復師を業とすることができる。
医師・歯科医師は診療所を開設できるが、柔道整復師にも施術所の開設が認められており、従来、その多くが自ら施術所(接骨院など)を開設し業を行っていたが、近年では施術所に雇用され施術者として勤務する者が多い傾向にある。また、病院、診療所の整形外科等において運動器リハビリテーションにかかわる者や、介護施設などにおいて機能訓練指導員を務める者、また、いわゆるトレーナーとして、さまざまなスポーツチームやスポーツジムに属する者などもおり、活躍の場は多様である。
[杉山 渉・小黒正幸 2021年9月17日]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…俗に接骨医,整骨医などともいわれるが,正式には柔道整復師という。柔道整復師法(1970)には〈都道府県知事の免許を受けて,柔道整復を業とするものをいう〉と規定されている。…
※「柔道整復師」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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