哺乳(ほにゅう)綱食肉目イヌ科の動物。家畜イヌの1品種で、日本在来の小形犬。1928年(昭和3)の日本犬保存会設立時に、在来犬を体格別に大形、中形、小形犬に分類し調査が実施されたが、柴犬は小形日本犬として標準がつくられた。文化庁は在来家畜を天然記念物に指定し、保存運動を行っているが、柴犬は1936年に天然記念物に指定された。以前は小形日本犬と称されていたが、現在は柴犬として犬種団体も呼称している。
日本犬の渡来については、北方から渡来したものや、南方から渡来したものなどが考えられている。柴犬は南方系に属し、東南方面などから渡来したものとみられ、パリア犬に近いものと思われる。現在ニューギニア島の山地に野生するニューギニアシンギングドッグなどは、毛色、体形、体格などがきわめて柴犬に似る。
中部、北陸、長野、山陰、四国などの各地方にそれぞれ系統があり、美濃(みの)柴、越後(えちご)柴、信州柴、山陰柴などと産地の名称をとってよばれたが、第二次世界大戦後の改良普及期に信州柴が主力を占め、系統別の地域差はみられなくなった。柴犬の語源については、毛色が柴に似ているからとか、柴をくぐって駆けるからとかいわれている。小さくとも性質は剛胆、動作は俊敏で、体質は強健である。手ごろな大きさと扱いやすさのため、著しく愛好者を増やし、北欧やアメリカ合衆国にも進出し、その性能を高く評価されている。体高35.5~41.5センチメートル。毛色は赤、胡麻(ごま)、ブラックエンドタン、白などである。
[増井光子]
小型日本犬を総称する犬種名で,産地により美濃柴,信州柴,石州柴などと呼ばれる獣猟犬,番犬。東北地方南部から関東,中部,山陰の各地方に広く分布し,縄文,弥生の時代から飼われてきた犬といわれる。山岳地帯や交通不便な山里で純粋性が維持され,美濃柴,信州柴などが最も有名。1936年に天然記念物に指定されたが,第2次世界大戦を経て激減し,また雑種化が著しく進んだ。戦後わずかに残存した島根,四国,山梨などの柴犬を基に再興がはかられ,現在の小型日本犬を見るに至った。毛色はごま,赤,虎,白,黒色。耳は三角で小さい立ち耳。尾は巻尾で,小型ながら筋骨はたくましく,よき家庭犬でもある。体高は雄約39cm,雌約36cm。
執筆者:一木 彦三
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