核兵器の廃絶を目ざす世界の非政府組織(NGO)や市民団体の連合体。英語の頭文字をとってICAN(アイキャン)と略称する。国連での核兵器禁止条約の制定に「主導的役割を果たした」として2017年にノーベル平和賞を受賞した。核軍縮関連の同賞受賞は2009年に「核兵器なき世界」を唱えたアメリカ大統領オバマ(当時)以来となる。
核兵器廃絶国際キャンペーンは、1985年にノーベル平和賞を受賞した核戦争防止国際医師会議(IPPNW)を母体にオーストラリアで活動を開始。2007年にオーストリアのウィーンで正式に発足した。事務局長はスウェーデンの法律家ベアトリス・フィンBeatrice Fihn(1982― )で、本部をスイスのジュネーブに置く。平和・反戦運動の象徴である赤色のピースマークとミサイルを折ったデザインとの組合せをシンボルマークとしている。世界101か国の468のNGO(2017年10月時点)からなる連合体で、日本の日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)などと連携し、核軍縮関連の国際会議へのNGOの参加を促し、核兵器禁止条約を求める国際的機運を高めた。日本のNGOではヒューマンライツ・ナウ、核戦争防止国際医師会議日本支部、ピースボートなどが参加し、チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世、芸術家のオノ・ヨーコら多くの著名人が活動に賛同している。
なお2017年に採択された核兵器禁止条約は核兵器を違法とする条約で、核兵器の開発、実験、製造、保有、移譲、威嚇としての使用を禁じている。国連の122か国が条約制定に賛成したが、アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国の核5大国のほか、アメリカの「核の傘」の下にある日本や韓国は交渉に参加しなかった。日本政府は核兵器廃絶国際キャンペーンのノーベル平和賞受賞について祝意を表しながらも、「核廃絶というゴールは同じだが、アプローチは異なる」との立場をとっている。
[矢野 武 2018年4月18日]
(大迫秀樹 フリー編集者/2017年)
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