知恵蔵 の解説
核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)
ICANは、米ソの医師・医学者が設立した核戦争防止国際医師会議(JPPNW)を母体としてオーストラリアで活動を開始し、07年にメルボルンを拠点に正式結成された。当初から、核抑止力という安全保障面によらず、普遍的な人道性という面から、「ヒバクシャ」の声に耳を傾けることを重んじてきた。同時に、「核兵器禁止条約」で第一歩を踏み出したように、「禁止先行型」による核廃絶のプロセスも提唱してきた。これは、核兵器の非合法化を先に実現した後、核保有国や日本を含む「核の傘」に依存する国々に圧力をかけながら、最終的に核廃棄・検証へと進むという戦略である。また、ネットなどを利用して、核兵器を製造する企業への投資を止めさせる「投資引き揚げキャンペーン」なども展開してきた。
こうした活動への賛同や核廃絶を願う国際世論を後ろ盾に、現在、世界約100カ国の470近い団体と提携関係を結ぶまでに成長している(17年末時点)。パートナー団体には、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)や平和首長会議(会長は広島市長)なども名を連ねる。活動方針の決定や組織の運営は、世界の主要NGOから成る国際運営グループがあたる。固定の代表者を置かず、ICANの母体であるJPPNW、婦人国際平和自由連盟、ピースボートなどの出身者が国際運営委員を務めている。日本人唯一の国際運営委員・川崎哲(ピースボート共同代表)は、10年から副代表、12~14年には共同代表を務めている。
(大迫秀樹 フリー編集者/2017年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報