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格差のグローバル化 かくさのぐろーばるか globalization of disparities

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知恵蔵2015の解説

格差のグローバル化

冷戦終結後、米国の一極支配と、米国流の新自由主義市場原理主義の貫徹という2つの力学により、さまざまなレベル格差のグローバル化が世界の社会的亀裂を深めている。 (1)軍事的には、米国は攻撃力と機動力などの圧倒的優越、命中精度の向上、無人機などによる戦闘のロボット化、戦争の民営化による効率化、国際法無視による脱法化などで最強の大国となった。だが、まさにその反面で、正規の戦争の枠外で、ゲリラやテロによる非対称的な反撃がグローバル化する傾向を生じた。アフガニスタンイラクが、その例である。(2)経済的には、世界規模の生産・通商やマネーゲームでの勝ち組の国境を越えた階層化、中間層の分解と貧困層の急増、負け組の「貧困の相続」による機会の不均等の固定化などは、米日に限らず、ロシアや中国などの新興市場国にも浸透した。勝ち組と負け組をつくり出すグローバルな市場の枠外には、アフリカの諸地域その他で、内戦・自然災害・飢餓・疫病などに苦しむ人々が棄民状態のまま放置されている。(3)それを反映して、社会的には教育の機会の不均等化、失業・リストラ非正規雇用など職業生活の不安定化、そして国家単位の医療・福祉保障機能の低下がグローバル化しており、その結果、エイズなどが、国を越えて数百万人の死因となっているにもかかわらず、民衆にはジェネリック薬品の入手すら困難である。他方、巨大製薬会社が特許権をもつ先進国では、富者が生活習慣病臓器移植などの先端医療を求めて国を越えて流動する。(4)以上のような格差のグローバル化により、先進国の労働者とくに中間・下流層に排外的・移民排斥的ナショナリズムへの回帰という縦割りの亀裂を生みやすい。しかし他面で、情報伝達手段が発達した現代では、文化や生活様式のグローバルな横割りの階層的亀裂をもたらさざるをえない。共産主義の崩壊後、こうした格差を不正義とする声、また先進国のキリスト教普遍主義文明の優越に対する最も根強い抵抗の声は、イスラム特にその原理主義者によってあげられている。そのどちらも「世界宗教」つまりグローバルな信条体系である。こうしたグローバルな亀裂が、西欧社会の内部からテロリズム生み出すという事例は、格差問題の深刻さを示している。

(遠藤誠治 成蹊大学教授 / 坂本義和 東京大学名誉教授 / 中村研一 北海道大学教授 / 2008年)

出典|(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵2015」
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