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テロリズム terrorism

翻訳|terrorism

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

テロリズム
terrorism

特定の政治的目的を達成するため,広く市民に恐怖をいだかせることを企図した組織的な暴力行使右翼左翼の政治的団体や,愛国的・宗教的集団,革命勢力などのほか,軍隊情報機関,警察などの国家組織によっても行なわれる。種々に定義され議論があるが,テロリズムの語が生まれたのはフランス革命期の 1790年代で,山岳派のマクシミリアン・ロベスピエールによる恐怖政治をさして用いられた。これは国家による国内の敵対勢力への暴力(白色テロ)の意であるが,20世紀には政治的要求や体制の打倒を目的とした国家に対する暴力(赤色テロ)の意味で使われることが多くなった。直接の攻撃対象だけでなく,大衆の恐怖心を暴力によってあおるものであり,その恐怖心を目的とする度合いにおいて古来の戦争ゲリラ戦と区別される。軍事的な勝利が見込めない場合においても,政治的目的のために実行される。ハイジャック,拉致,誘拐,爆破,自爆などの手段がとられ,心理的な効果をねらって多くの市民が行き交う公共の場や,経済的・政治的な要地が攻撃の対象とされることが多い。国家体制の打倒を試みた革命的なテロ組織として,イタリアの赤い旅団ドイツ赤軍派,スペインのバスク祖国と自由,ペルーのセンデロ・ルミノソ日本赤軍などが知られる。国家による,もしくは国家の後ろだてによるテロの例としては,冷戦期のソビエト連邦,1980年代アメリカ合衆国が支援したアンゴラ全面独立民族同盟 UNITA,20世紀後半から 21世紀初めにイランシリアなどのイスラム諸国が支援した過激派組織などが行なったものがあげられる。1973~90年のチリや,1976~83年のアルゼンチンを支配した軍事政権は,自国民を対象にテロを行なった(→汚い戦争)。20世紀後半,ハマスアルカイダなどイスラム原理主義の思想をもつ組織がテロを行ない,21世紀に入ると「イスラム国」も台頭した。大量破壊兵器を使ったテロの懸念も高まるなか,1995年日本の東京都で,オウム真理教化学兵器としてサリンを使用したテロを行なった(→地下鉄サリン事件)。2001年のアメリカ同時テロは,テロとして史上最多の死者を出し,これをうけてジョージ・W.ブッシュ大統領は,対テロ戦争(テロとの戦い)をアメリカの外交政策の軸に据えた。

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知恵蔵の解説

テロリズム

歴史的には、フランス革命期の恐怖政治、ロシア革命直後の革命派と反革命派による暴力活動などを指す。しかし近年、動機が多様化し、攻撃目標が要人から一般市民に、攻撃場所も街頭、高層ビル、航空機などに拡大。被害規模も大きくなっている。そのため暗殺、公共施設の爆破や占拠、人質を使った強要など、交戦時の戦闘行為や合法的警察行動以外の暴力行使を、広く指す。動機や目的は大別すれば、(1)少数個人による宗教、民族、イデオロギー上の聖戦の遂行。スリランカのタミル人過激組織によるとされるラジブ・ガンジーインド首相暗殺や、エジプトのルクソールにおける観光客襲撃事件など。(2)差別・抑圧に対抗し、自ら不正義と考える現状を広く知らせようとする暴力行動。ペルー日本大使公邸人質事件、ケニア・タンザニアの米国大使館の爆破事件など。米の同時多発テロは(1)、(2)の要素が重なり合う。(3)異端者や異見の主張者の暴力による排除。自集団を思想的に締め付けるための見せしめにする狙いもある。伝統批判の自由を主張する作家に対する、イスラム原理主義団体の死刑宣告など。(4)外交的妥協政策の阻害。中東和平を推進したラビン・イスラエル首相の反対派ユダヤ人による暗殺、イスラム急進派のハマスによる連続爆破事件など。(5)従来の枠に当てはまらない社会攻撃。米国でコンピューター社会への反乱を唱える元大学教員(通称、ユナボマー)が郵便爆弾を送り付けたり、自称「愛国者集団」が大きな政府反対の名目で連邦政府ビルを破壊するなど、先進国内の疎外を示す事件。地下鉄サリン事件も、この類型だろう。

(坂本義和 東京大学名誉教授 / 中村研一 北海道大学教授 / 2007年)

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デジタル大辞泉の解説

テロリズム(terrorism)

政治的目的を達成するために、暗殺・暴行粛清・破壊活動など直接的な暴力やその脅威に訴える主義。テロ。

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百科事典マイペディアの解説

テロリズム

政治的目的を実現するためにとられる殺人などの恐怖手段,またはそれを基礎とする立場。単なる暗殺とは違い,無差別な殺人や傷害も辞さない。ロシアの社会革命党や日本の血盟団(血盟団事件)などのように左翼・右翼ともにこの手段を用い,それぞれ赤色テロ,白色テロなどという。
→関連項目危機管理時限爆弾シャルリー・エブド

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世界大百科事典 第2版の解説

テロリズム【terrorism】

組織的・集団的暴力の一形態であり,心理的威嚇や勢力の誇示といった政治的効果をねらうため,政治集団により行使される暴力をいう。テロリズムは,主として革命時や内乱時に生ずるが,比較的小さな代価で大きな効果をうむため,平時に少数派の政治集団により用いられる例も増加しており,暗殺のような個別的暴力行使の形態と近似しつつある。内乱時のように政治社会の分極化状況のもとで生じるテロリズムでは,行使する主体によって革命的(赤色)テロルと反革命的(白色)テロルとが区別されるが,元来テロリズムは反革命的支配階級の常套(じようとう)手段とされ,革命派はこれと対抗するために防衛手段としてテロリズムをとったのである。

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大辞林 第三版の解説

テロリズム【terrorism】

一定の政治目的を実現するために暗殺・暴行などの手段を行使することを認める主義。また、それに基づく暴力の行使。テロ。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

テロリズム
てろりずむ
terrorism

テロリズムとは、ある政治的目的を達成するために、暗殺、殺害、破壊、監禁や拉致(らち)による自由束縛など過酷な手段で、敵対する当事者、さらには無関係な一般市民や建造物などを攻撃し、攻撃の物理的な成果よりもそこで生ずる心理的威圧や恐怖心を通して、譲歩や抑圧などを図るものである。政治的目的をもつという意味で単なる暴力行為と異なるが、それらの目的には、政権の奪取や政権の攪乱(かくらん)・破壊、政治的・外交的優位の確立、報復、活動資金の獲得、自己宣伝などさまざまなものがある。これらテロリズムを行う主体をテロリストといい、個人から集団、あるいは政府や国家などが含まれる。[青木一能]

テロリズムの由来

テロリズムの由来は、フランス革命期のジャコバン派の恐怖支配(1793年6月~1794年7月)にあるとされる。爾来(じらい)、「白色テロリズム」あるいは反動的テロリズムとよばれる支配体制側が反対勢力を抑圧・弾圧する事例や、反体制側がとる暴力行為、すなわち「赤色テロリズム」あるいは革命的テロリズムが数多く発生した。なかでも赤色テロリズムは、マルクス・レーニン主義において革命期などの社会的変革期に人民大衆が行う闘争手段として位置づけられてきた。1930年代のスペイン内戦では、ファシスト・フランコ勢力側と敵対する人民戦線側との間で相互にテロの応酬が行われたが、それらは体制側と反体制側がともにテロリズムの主体となっているという点で、テロリズムの多義性を示している。
 テロリズムの個々の事例における直接的原因はさまざまであるが、いずれの場合にも共通する究極的因子として「現状維持」指向あるいは「現状変革」指向が根底にあるといえよう。現体制を維持しようとする側は現状を揺さぶる反対勢力を抑圧・弾圧しようとし、現状に不満をもつ側は現状を破壊もしくは変革しようとする場合がある。テロリズムという暴力的行為によって現状維持あるいは現状変革を目ざそうとするのは明らかに否定すべきことだが、近年においてテロリズムはなおいっそう頻発の傾向をたどっている。[青木一能]

アメリカ同時多発テロ

その傾向を衝撃的に世界に示したのが、2001年9月11日に発生したアメリカ同時多発テロであった。テロリストにハイジャックされた民間飛行機がニューヨークの世界貿易センタービル、バージニア州アーリントン郡の国防総省(ペンタゴン)にそれぞれ激突し、約3000人の民間人を死亡させた。この惨劇は瞬時に世界に報道され、テロリズムの脅威を再認識させることになった。ただちにアメリカのジョージ・W・ブッシュ大統領(当時)は、21世紀の「新たな戦争」の開始を宣言し、オサマ・ビンラディンを指導者とするアルカイダとその支援国家に対する対テロ戦争への姿勢を明らかにした。
 アルカイダはイスラム原理主義過激派と目され、イスラムの世俗化を促すと同時にグローバリゼーションの旗手として優位な立場を強化するアメリカを最大の敵としてとらえ、各種の対米テロ活動を行ってきた。1993年の世界貿易センタービル爆破事件、1996年の在サウジアラビア米軍基地爆破事件、1998年の在ケニアと在タンザニアのアメリカ大使館爆破事件、2000年のイエメン沖の米艦襲撃事件などを引き起こしたといわれる。1998年の大使館襲撃事件後の1999年に国連安全保障理事会は決議を採択して、アフガニスタンのタリバン政権にビンラディンとアルカイダメンバーの引き渡しを求めた。またテロ支援国家についてブッシュ大統領は2002年1月に「悪の枢軸」としてイラク、イラン、北朝鮮を名指して非難した。[青木一能]

テロリズムへの対策と現状

一方、2001年10月、アメリカは有志連合を糾合して、アルカイダを支援するタリバン政権への攻撃を開始した(「不屈の自由作戦」)。まさに21世紀の対テロ戦争の火ぶたが切って落とされたのだが、同作戦は翌2002年にはフィリピン、ジョージア(グルジア)、ジブチ、エチオピア、ソマリアでも行われ、さらに2003年3月にはイラクへの攻撃が開始された。
 そうした対テロ戦争はテロの抑止よりも「報復の連鎖」状況を生み出しているのが現実である。アルカイダ以外にも2008年のインド同時多発テロに代表されるように、多くのテロリストが世界各地でテロを頻発させている。むしろテロという手段が即席の爆破装置や自爆などのようにコストや技術面で容易かつ簡便さをもつだけに、現状を揺さぶり、自らの主張を実現するための効果的なものとして増加さえしている。
 それに対して世界の多くの政府は対テロ組織・部隊をもち、その対策に躍起になっている。しかし、近年の交通・通信技術の革命的発達やグローバリゼーション下の国際間の人的移動の拡大などは、神出鬼没なテロ活動に有利な条件と攻撃対象の多様化をもたらし、その防止をいっそうむずかしくさせている。加えて、多くの社会において深まる社会的経済的格差は現状変革へのエネルギーを鬱積(うっせき)させ、その暴発を一部テロという形で発現させる蓋然(がいぜん)性を高めている。[青木一能]

テロリズムの多様化

地球が網状的なシステムで結合している現代世界において、テロ活動は必然的に国際化すると同時に、テロ・グループ間の連携をも促している。また、その手法と対象も多様化し、サイバーテロやエコテロリズムといった現象すら生じている。サイバーテロとは、インターネットのサイト上のデータの破壊、コンピュータ・ウイルスの大規模な配布、通信回線の停止などを通じて、ある社会的・政治的主張を実現あるいは伝達する場合をいう。またエコテロリズムとは、環境や動物の保護などを目的に破壊や脅迫、暴力的行為を行う場合にいう。その活動団体としては、動物解放戦線、地球解放戦線、シーシェパードなどが知られており、放火や爆破、略奪などの非合法活動を行っている。自己の主張を実践するためには手段を選ばない行動は、他のテロリズムと同様に、広く賛同を得られるものではない。
 結局、無関係な人々を巻き込み、人々の心理的恐怖心を煽(あお)って自己の目的を達成するというテロリズムは、どのような大義名分を掲げたとしても、けっして認知されるものではないだろう。[青木一能]

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世界大百科事典内のテロリズムの言及

【恐怖政治】より

…一般的には,権力を掌握した党派ないし個人が,武力ないし暴力を背景とし,反対派に対する逮捕,投獄,処刑,殺害などの手段を用い,民心をして恐怖せしめることによってみずからの権力の維持とその政策の貫徹とを図ろうとするような政治形態をいう。そのような一般的な意味では,テロリズムともいう。だが,歴史的には,フランス革命期の1793年から94年にかけて行われた革命的独裁政治が,断頭台などによる大量処刑を伴ったために恐怖政治と呼ばれており,狭義の恐怖政治は,この時期のフランスの政治形態を指す。…

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