椀飯(読み)オウバン

デジタル大辞泉 「椀飯」の意味・読み・例文・類語

おう‐ばん〔ワウ‐〕【×椀飯/×埦飯/×垸飯】

《「わう」は「わん」の音変化》
椀に盛った飯。
饗応きょうおうすること。また、そのための食膳公家では殿上てんじょう集会などに、武家では家臣主君をもてなすさいに行われ、鎌倉室町時代には幕府儀式ともなった。

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精選版 日本国語大辞典 「椀飯」の意味・読み・例文・類語

おう‐ばんワウ‥【椀飯・埦飯・垸飯】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「わう」は「わん(埦)」の変化したもの )
  2. 飯器に盛った飯。椀に盛ってすすめる飯。
    1. [初出の実例]「六日、殿上、女方等送垸飯」(出典:御堂関白記‐寛弘七年(1010)閏二月六日)
    2. 「すかうわうばむ、よのやかたにはみちみちたりと申せども」(出典:幸若・夜討曾我(室町末‐近世初))
  3. 王朝時代、公卿たちが殿上に集まったときの供膳。鎌倉・室町時代には将軍家大名が祝膳を奉る儀式となり、年頭の恒例として、また、慶賀の時などに行なった。応仁の乱以後はあまり行なわれなくなり、江戸時代には、民家で正月親類などを招いて宴を催すことをいった。大供応盛饗。→椀飯振舞(おうばんぶるまい)。《 季語・新年 》
    1. [初出の実例]「賀茂臨時祭也。経通兵衛佐於宿所装束、依相公被一レ示令埦飯」(出典権記‐長徳四年(998)一一月三〇日)
    2. 「そかの介のふやかた、まい年のかれいにて わだ一ぞくをあつめ、大はんのふるまいに」(出典:歌舞伎・傾城嵐曾我(1708)二)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「椀飯」の意味・わかりやすい解説

椀飯
おうばん

もとは食器に盛った飯の意。供応のため設けた食膳,さらに供応それ自体をもさす。公家では年始,吉事などの際,朝臣に供応を命じた。鎌倉,室町幕府も,正月恒例の行事として有力な幕臣に供応の役を課した。江戸時代には,民間でも正月の祝いに一家親族を供応することを椀飯といった。

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