日本大百科全書(ニッポニカ) 「植崎九八郎上書」の意味・わかりやすい解説
植崎九八郎上書
うえざきくはちろうじょうしょ
寛政(かんせい)の改革(1787~93)の際、幕府小普請組(こぶしんぐみ)の植崎九八郎政由(まさより)が書いた江戸幕政についての意見書。1787年(天明7)7月付けの建白である。田沼(たぬま)政治に不満をもっていた幕臣の立場から、政治の刷新を期待し、改革政治の課題を率直に論じている。すなわち前代の老中田沼意次(おきつぐ)の政治を痛烈に批判し、年貢負担の軽減、綱紀の粛正、人材の登用、物価の引き下げ、消費の抑制、農業人口減少の防止などを主張している。当時は上書ブームであり、儒者大塚孝威の「救時策」や下駄屋甚兵衛(げたやじんべえ)の上書などとともに、寛政の改革に寄せる期待の大きさをうかがうことができよう。なおその期待が十分に実現されなかったため、のちに植崎は『牋策雑収(せんさくざっしゅう)』1巻を書き、松平定信(さだのぶ)の改革政治をも批判している。ともに『日本経済大典』第20巻に所収。
[竹内 誠]