改訂新版 世界大百科事典 「標準報酬制総報酬制」の意味・わかりやすい解説
標準報酬制・総報酬制 (ひょうじゅんほうしゅうせいそうほうしゅうせい)
雇用労働者を適用対象とする社会保険の保険料は,被保険者たる雇用労働者が,給与,俸給,賃金等の名称のいかんにかかわらず労働の対価として得られた報酬(労基法の賃金に相当)に保険料率を乗じて算出され徴収されるが,被乗数には標準報酬制をとるものと総報酬制をとるものとがある。前者は,標準的な報酬(賞与を除き,毎月一定の日に支給される賃金)月額を定め,被保険者の報酬をいずれかの等級(健康保険では,1997年3月現在30等級)に分類,格付けし,標準報酬月額に保険料率を乗じて保険料を算出し徴収する方式である。この方式の長所は,被保険者の報酬月額の微少な変動に左右されることなく一定の保険料が徴収できるので保険料収入が安定していることである。短所としては,標準報酬月額を上下する被保険者でも,同じ等級に格付けされれば同額の保険料が徴収されるので,公平負担の原則に反する点があげられる。なお,日本の社会保険のほとんどはこの方式を採用している。一方,後者は文字どおり被保険者の報酬総額(賞与等を含む)に保険料率を乗じて保険料を算出,徴収する方式である。この方式の長所短所は標準報酬制とはまったく反対で,負担は公平であるが,保険料収入に若干の変動が生ずる。日本では,労働者災害補償保険がこの方式を採用している。
日本では,保険料は原則として労使折半であるが,国によっては事業主が多く負担したり,地方自治体等が負担する例もある。
執筆者:大内 講一+石本 忠義
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報