鉄道、船舶、航空機などの交通手段(運搬具、動力)の運転・操縦にあたる交通事業の職種である。
(1)鉄道機関士 国鉄時代には機関士、電気機関士の職名であり、機関車の運転および運転整備が主たる職務であったが、1987年(昭和62)の分割・民営化以降のJR各社では呼称を「運転士」と改め、新幹線電気車、甲種電気車、甲種内燃車、甲種蒸気機関車に資格が分類されている。職務内容は、運転業務のほかにワンマン化の進展で車掌業務にも拡大している。
民鉄(私鉄)でも同様にかつては機関士、電気機関士の職名であり、機関車の運転および運転整備が主たる職務であったが、機関車が牽引(けんいん)する貨物列車が廃止され、旅客列車の多くが電車や気動車に置き換えられたため、その職務は列車の運転士に引き継がれている。職名としての機関士は、電車化された時点で使用されなくなった。
列車の運転士となるには、JR、民鉄ともに運輸系業務員に採用されたのち、駅員、車掌などを経て運転適性を満たすことが要件である。動力車操縦者養成所での教育、国家資格の取得後に、現場における見習い期間を経るのが通例である。かつての国鉄では、機関士になるためには、上記の要件のほかに、鉄道学園での6か月間の教育、機関士としての3年間の実務、そしてふたたび鉄道学園での6か月間の教育を要していた。
(2)船舶機関士 職務は、船の機関(エンジン)の運転・整備のほか、船内の発電機や冷凍機、荷役作業機械、船内生活に直接必要な機関・電気関係機器の管理などである。機関長(チーフ・エンジニア)が機関部最高責任者として船長を補佐し、一等機関士(ファースト・エンジニア)、二等機関士(セカンド・エンジニア)、三等機関士(サード・エンジニア)を統率する。船舶の機関士になるには、船舶職員及び小型船舶操縦者法により海技士(機関)の国家試験に合格することが要件である。外航船は外国人との混乗が多いため、英語堪能が必須(ひっす)条件となる。
(3)航空機関士 航空機に乗務し、エンジンをはじめ機器類の管理などを主たる職務としている。1990年代から航空業界では種々の合理化に伴い、機関士へのパイロットとしての能力付与(イン・キャパシティ化)訓練を行う一方、そもそも機関士を必要とする機材が徐々に引退していった。この結果、2009年(平成21)7月以降、日本では航空機関士の職種は事実上なくなった。
[松尾光芳・藤井秀登]
『国土交通省鉄道局監修『注釈 鉄道六法』各年版(第一法規出版)』▽『海事法令研究会編、国土交通省海事局監修『海運六法』各年版(成山堂書店)』▽『国土交通省航空局監修『航空六法』各年版(鳳文書林出版販売)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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