出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
脳室という脳内部の空間が拡大する「水頭症」のうち、頭蓋骨(とうがいこつ)内部の圧が上昇しないタイプをさす。NPHと略称される。過剰になった脳脊髄(せきずい)液の影響で、とくに前頭葉が障害され、歩行障害・認知障害・排尿障害の三主徴が現れる。脳室では1日に約500ミリリットルの脳脊髄液がつくられ、つねに入れ替え(産生と吸収)が行われている。その脳脊髄液の脳や脊髄表面における吸収上の不具合を本症の主原因と考えるものが多い。
正常圧水頭症は特発性・二次性・家族性に分類される。もっとも多い特発性正常圧水頭症は、おもに高齢者に起こり、日本では65歳以上の人の1~2%にみられるとされる。それだけにアルツハイマー病などの認知症との鑑別が問題になる。また、くも膜下出血や髄膜炎などの後遺症として生じるのが二次性である。ごくまれだが、遺伝的要因により発症すると考えられる家族性もある。
正常圧水頭症の診断では脳室の拡大を確認することが重要で、頭部CT、MRI検査が有用である。また過剰にたまった脳脊髄液を排除すると、歩行障害などの症状が改善するケースが多い。そこで腰椎(ようつい)を穿刺(せんし)して、くも膜下腔(くう)から脳脊髄液を少量抜き取り、その後2、3日以内における症状の変化を評価する。これをタップテストといい、脳脊髄液を身体のほかの部位へ導く経路を造る手術(シャント手術)の適否などの治療方針を決めるうえでも重要である。具体的な手術法として、「脳室―腹腔シャント」と「腰椎―腹腔シャント」が主流である。
[朝田 隆 2024年3月19日]
…血管攣縮は,くも膜下腔へ流出した血液成分の分解産物が原因と考えられるが,これに対する治療法はまだ確立されていない。くも膜下出血のもう一つの合併症として正常圧水頭症がある。これは髄液(脳脊髄液)の循環状態が異常をきたしたもので,脳室―腹腔短絡術が功を奏する。…
※「正常圧水頭症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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