日本大百科全書(ニッポニカ) 「歯肉腫」の意味・わかりやすい解説
歯肉腫
しにくしゅ
歯肉部に生じた良性の限局性腫瘤(しゅりゅう)に対する臨床的総括名。英名のエプーリスepulisは、ラテン語のepi(上)とulis(歯肉)の合成語である。炎症性の増殖物および良性の腫瘍(しゅよう)がこれに含まれ、浸潤性増殖や転移をおこすことはない。歯肉腫は一般に歯槽骨、歯槽骨骨膜、歯根膜、歯肉から発生する。とくに歯間部に発生しやすく、上顎(じょうがく)の口唇側が好発部位である。また、好発年齢は20~30歳代で、男性よりも女性に多い。治療は外科的に摘出する。なお、妊娠時に生じるものは妊娠性エプーリスとよばれ、分娩(ぶんべん)後に縮小または自然消失することがあるので、とくに障害がない限り経過観察を行う。
[矢﨑正之]