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死体化生神話 したいかせいしんわ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

死体化生神話
したいかせいしんわ

世界や人類,穀物などが主として原初の神や人間の祖先の死体から生れたとする神話。中部オーストラリアのアランダ族の神話によれば,彼らの祖先はカロラという食虫袋ねずみであり,永劫の闇の中に横たわっているカロラの臍や腋の下から息子たちが生れたという。また,穀物起源神話を分類した A.イェンゼンによれば,それらは天界や他界から種を盗んでくるというモチーフ=プロメテウス型と,地母神や祖先の死体から作物が生育してきたというモチーフ=ハイヌベレ型に大別されるという。後者が死体化生神話であり,根茎類や稲,果樹などの起源を示す神話としてインドネシア各地に分布している。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

死体化生神話
したいけしょうしんわ

神または人間が死に、その死体からさまざまな事物が発生したという形式の神話。その代表的なものは、死体から宇宙あるいは世界が発生したという「盤古(ばんこ)型神話」と、死体から栽培植物が発生したという「ハイヌウェレ型神話」である。中国の『述異記(じゅついき)』(任(にんほう)著、6世紀)によれば、昔、盤古という巨人が死んだとき、その頭は四岳、目は日月、脂は江海、毛髪は草木となったといい、『五運歴年記(ごうんれきねんき)』(三国呉(ご)の徐整著)によれば、盤古がまさに死のうとするとき変身し、呼吸は風雲、声は雷、左目は太陽、右目は月となった。さらに、手足と五体は天を支える4本の柱(四極)や五つの名山(五嶽)になり、血液は川、筋や脈は地理、肌や肉は田土、髪や髭(ひげ)は星、皮や毛は草木、歯骨は金石、精髄は珠玉となり、汗は流れて雨沢に、身体に寄生していた虫は風に感じて人民となったという。インドの聖典『リグ・ベーダ』によれば、原人プルシャがいけにえにされたとき、口から祭司階級(バラモン)、両腕から王族(クシャトリヤ)、両腿(もも)から農工商階級(バイシャ)、両足から奴隷階級(シュードラ)が生じ、さらに心臓から月、目から太陽、へそから空界、頭から天界、足から地界、耳から方位が生じたという。同様に北欧神話でも、原巨人イミルの死体から世界の個々の部分ができたという。ほかにミクロネシアなどにも類話があり、世界的にみて古代文明地帯とその影響圏に顕著にみられる神話形式である。[大林太良]
『大林太良著『神話学入門』(中公新書) ▽大林太良著『世界の神話』(1976・NHKブックス)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典内の死体化生神話の言及

【照葉樹林文化】より

…このほか,若い男女が山や丘に登り,歌をうたい交わして求婚する歌垣の慣行や,生命は山に由来し,死者の魂は死後再び山に帰っていくという山上他界の観念,春の農耕開始に先だって狩猟を行い,獲物の多寡で豊凶を占う儀礼的狩猟の慣行など,山をめぐる各種の習俗にも共通の特色がある。また,〈記紀〉の神話のなかにあるイザナギ・イザナミ型の兄妹神婚神話,あるいはオオゲツヒメなど女神の死体からアワなどの作物が発生する死体化生神話,さらには羽衣伝説や花咲爺の説話など,神話や説話の要素でも,照葉樹林帯に共通するものが多い。 このように東アジアの照葉樹林帯の民族文化のなかにみられる諸特色と日本の伝統的文化の間には,きわめて多くの共通性と強い類似性がみられることが明らかになってきた。…

※「死体化生神話」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について | 情報

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