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毒婦物 どくふもの

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世界大百科事典 第2版の解説

どくふもの【毒婦物】

歌舞伎狂言の一系統。女だてらに男勝りの強請(ゆすり)や人殺しをする〈毒婦〉を主人公とした作品の総称。歌舞伎では毒婦の役柄を〈悪婆〉というので,悪婆物とも称する。1792年(寛政4)11月江戸河原崎座上演の《大船盛鰕顔見世(おおふなもりえびのかおみせ)》で4世岩井半四郎三日月おせんという私娼を演じたのが悪婆の始まりとされるが,女性として積極的な生き方をする悪婆のほとんどが悪所(岡場所など)の出身であることは暗示的である。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

毒婦物
どくふもの

世間から姦婦(かんぷ)、淫婦(いんぷ)と称された女性を主人公にした実録や小説をいう。文学史上では、明治10年代に流行した久保田彦作『鳥追阿松(とりおいおまつ)海上新話』(1878)、仮名垣魯文(かながきろぶん)『高橋阿伝夜刃譚(おでんやしゃものがたり)』(1879)などの草双紙合巻形式の作品をさす。これらは、封建的な社会秩序からはみでた女性のスキャンダラスな事件を刺激的に描いたものである。毒婦物の意義は、虐げられた性の呪縛(じゅばく)と怨念(おんねん)を通して、美と性の虚妄を描いたところにある。また現実の事件に取材し、そのニュース性を草双紙的世界に取り込み、戯作(げさく)の新しい可能性を開いたところに特色をもつ。[浅井 清]
『『明治文学全集1・2 明治開化期文学集 1、2』(1966、67・筑摩書房) ▽亀井秀雄著『毒婦と驕女』(本田錦一郎編『変革期の文学』所収・1976・北海道大学図書刊行会)』

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世界大百科事典内の毒婦物の言及

【夜嵐お絹】より

…猿若町の芝居茶屋から芸者に出て,小林金平なる金貸しの妾(めかけ)となるが,役者の嵐璃珏(りかく)(後,市川権十郎)と密通のうえ,主人金平を毒殺したため晒首(さらしくび)となった実録が,多くの講釈師によって読まれた。《妲己(だつき)のお百》《鬼神のお松》《高橋お伝》などとともに,いわゆる〈毒婦物(どくふもの)〉の代表作である。【矢野 誠一】。…

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