歌舞伎狂言。世話物。3幕9場。通称《切られお富》。河竹黙阿弥作。1864年(元治1)4月江戸守田座で《若葉梅(わかばのうめ)浮名横櫛》として初演,同芝居が初日の翌日類焼したため,同年7月再開場に際して《処女翫浮名横櫛》と改題続演した。配役は赤間源左衛門を4世中村芝翫,お富を3世沢村田之助,蝙蝠安を市川九蔵(のちの7世市川団蔵),井筒与三郎を2世沢村訥升(のちの4世助高屋高助)など。《与話情(よわなさけ)浮名横櫛》の書替狂言だが,独立した内容を持ち,むしろ原作をしのぐとさえいえる。赤間源左衛門の妾お富は,北斗丸の刀を詮議している浪人井筒与三郎と滑川(なめりがわ)の辻堂で密通したことが知れ,源左衛門の手で切りさいなまれ,川に捨てられる。子分の安蔵(蝙蝠安)がこれを助け,お富と薩埵峠(さつたとうげ)に茶店を出して同棲中,通りすがった与三郎はお富と再会。お富は北斗丸を買い戻す金を調達する目的で,府中弥勒町(みろくまち)で女郎屋をいとなむ源左衛門を安蔵と2人で訪ねて,二百両の金をゆすりとる。その帰途,2人は畜生塚で金を争い,お富は安蔵を殺して金を与三郎に渡す。お富の父丈賀が来て,与三郎とお富は兄妹,安蔵はお富の旧主と知れる。心中をはかるお富と与三郎は,源左衛門実は盗賊観音久次によって留められ,一刀は与三郎の手に戻り,源左衛門は刀を奪ったことを悔いて自害し,お富もみずからを恥じて自害する。幕末期の悪婆(あくば)物の典型で,女の性格が境遇によってがらりと変わる描写がすぐれている。また黙阿弥にはほかにも《切られ与三》の書替狂言として《月宴升毬栗(つきのえんますのいがぐり)》(《ざん切りお富》,1872年10月東京守田座初演)がある。
執筆者:小池 章太郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報
働き手が自分の働きたい時間に合わせて短時間・単発の仕事に就くこと。「スポットワーク」とも呼ばれる。単発の仕事を請け負う働き方「ギグワーク」のうち、雇用契約を結んで働く形態を指す場合が多い。働き手と企...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新