精選版 日本国語大辞典 「毛生薬」の意味・読み・例文・類語
けはえ‐ぐすり【毛生薬】
- 〘 名詞 〙 毛を生えさせるための薬。
- [初出の実例]「おんみつで毛はへ薬を買にやり」(出典:雑俳・幸々評万句合‐安永二(1773)情二)
頭髪の脱毛防止と養毛を目的とする化粧品および医薬部外品(薬用養毛剤)の慣用名で,現在はヘアトニックと呼ばれているもの。トニックは強壮にするという意味で,頭髪に清涼感をあたえるエチルアルコールやメントール,頭皮を刺激し発毛を促進するトウガラシチンキなどのチンキ類,ふけ,かゆみをおさえるレゾルシンや抗ヒスタミン剤,そのほかホルモンやビタミン類などが配合されている。古代エジプト以来,蛇の油やタマネギの汁を塗ったりして発毛を促した記録は多いが,ヨーロッパでは17世紀に入ると鬘(かつら)が流行したのでその必要性は少なくなった。中国では唐代の《千金翼方》などの医書に各種生薬を猪脂に配合した〈生髪膏(こう)〉などがあり,日本では《都風俗化粧伝(みやこふうぞくけわいでん)》に〈髪生え薬の伝〉として各種生薬をゴマ油でといた処方などがある。明治以降,男性の髪形は断髪となったため,頭髪香水,ベーラム,ヘアトニックなど,アルコール基剤の化粧品となって今日に至っている。
執筆者:高橋 雅夫
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