EU(ヨーロッパ連合)の立法や政策形成において、民主的な代表である欧州議会(ヨーロッパ議会)の関与が不十分であるとの批判をさして使われることが多かったことば(2000年代初頭まで)。
この批判が登場したのは1980年代後半である。当時の制度では、EU(当時EC、ヨーロッパ共同体)の立法や政策の形成を中心的に行うのは、専門官僚機関である欧州委員会(ヨーロッパ委員会)と、EU各国政府(行政部)代表の会議(閣僚理事会)であった。欧州議会は直接選挙で選ぶ民主代表機関であったが、欧州委員会の提出する法案に法的拘束力のない意見を表明するにすぎず、法案の修正も採否も決定できなかった。域内市場統合のために人々の生活に直接影響する立法が当時多く採択され、それを民主代表の欧州議会が決定できない点が問題視され、この批判が登場した。
その後、1990年代から2000年代にかけて一連の基本条約改正により欧州議会のEU立法・政策形成への関与と決定権が増強され、2009年発効のリスボン条約では、EUの立法事項の大部分について欧州議会が閣僚理事会と対等に欧州委員会の提案を修正し採否を決定できるようになった。
ゆえに今日では、欧州議会の立法や政策形成への関与が不十分という批判は薄れた。今日いう民主主義の赤字は、いまなおEUの立法や政策形成の過程が複雑で人々には難解で不透明にみえ、EUの活動がニュースにもあまり登場せず、人々が自分のこととしてEUを身近に感じにくい不満を表していることが多い。
[中村民雄 2018年6月19日]
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