ヘンデルの管弦楽組曲。ハレ版《新ヘンデル全集》では22曲。異曲11曲が知られる。現在では6曲を選んで編曲した指揮者ハーティHamilton Harty(1879-1941)の版が広く用いられている。作曲年は不詳。1715年テムズ川でのイギリス国王ジョージ1世の舟遊びのときにこの曲が演奏されたという逸話がよく知られているが確証はない。当時の新聞その他の記録から確かなことは,17年に水上の音楽会が行われ,そこでヘンデルの音楽が演奏されたということである。水上の催しは36年にも行われており,曲全体がヘ長調,ニ長調,ト長調の三つのグループに分けられることから,それぞれ1715年(?),17年,36年に作曲されたという推測(ハレ版)もある。音楽様式はイタリアのコレリの協奏曲,フランスの舞曲,イギリスの管楽器の音楽の三つを融合したもので,ヘンデルの音楽の国際的な幅の広さをうかがわせる。
執筆者:鴇田 信男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ヘンデル作曲の22曲からなる大規模な管弦楽組曲(レドリッヒ校訂のハレ版「新ヘンデル全集」による)。真偽のほどは確かではないが、作品の成立事情について次のようなエピソードがある。ヘンデルはドイツからイギリスへ移住する際に、仕えていたハノーバー選帝侯の不興を買ってしまったが、その主君が1714年、ジョージ1世としてイギリスの王に迎えられた。そこで彼は和解を策してこの音楽を作曲し、1717年夏、テムズ川の舟遊びの際に王の御前で演奏、ふたたび王の寵愛(ちょうあい)を受けるようになった、というものである。特別な催しのために書かれた作品だけに、楽章の配列や楽器の編成にも不明な点があり、現代では、ハーティが6曲に編曲した版と、クリサンダーが20曲に編曲した版で演奏されることが多い。いわゆる実用音楽に属する作品ではあるが、音楽的にも高度な水準を保ち、その明快な表現によってバロック音楽の代表作として広く親しまれている。
[三宅幸夫]
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…晩年のオラトリオの中ではとくに《テオドラ》(1750)や《イェフタ》(1752)が名高い。 なお,器楽作品としては,作品3の6曲のコンチェルト・グロッソ,作品6の12曲のコンチェルト・グロッソ,作品4および7のオルガン・コンチェルトのほか,《水上の音楽》や《王宮の花火の音楽》(1749年アーヘンの和約を記念する祝典で初演された)がある。コンチェルト・グロッソやオルガン・コンチェルトのうちのいくつかは,オラトリオの幕間に余興として演奏されたものであり,《水上の音楽》や《王宮の花火の音楽》はいずれも戸外で演奏された作品である。…
※「水上の音楽」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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