水素吸蔵合金(読み)スイソキュウゾウゴウキン

デジタル大辞泉 「水素吸蔵合金」の意味・読み・例文・類語

すいそきゅうぞう‐ごうきん〔スイソキフザウガフキン〕【水素吸蔵合金】

水素自己体積の1000倍以上吸収する能力をもつ合金材料ニッケルチタン・鉄など。水素を低温・高圧下で吸収し、高温・低圧下で放出する。ニッケル水素電池水素自動車燃料電池車燃料タンクとして用いられる。水素貯蔵合金

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化学辞典 第2版 「水素吸蔵合金」の解説

水素吸蔵合金
スイソキュウゾウゴウキン
hydrogen storing alloy, hydrogen absorbing alloy

水素圧と温度の条件に依存して,多量の水素を可逆的に吸蔵・放出できる合金.水素を吸収する金属と活性化する金属との組合せからなっている.金属の結晶格子間に原子状の水素が入り込んで,金属水素化物となり,金属の体積の数百倍もの水素を蓄えることができる.水素吸蔵合金の種類は,用いている元素により,Mg系,Ti系,V系,Mn系,希土類系などに分けられ,さまざまな組合せが知られている.希土類系合金は比較的活性化が容易で,吸蔵できる水素濃度が高く,室温において数気圧で水素の吸蔵・放出を行えるなどのすぐれた特性をもっている.水素吸蔵・放出の原理は下記の反応による.

金属水素化合物(固体) + ΔH(熱)   

水素吸蔵時には発熱反応を伴い,水素放出時には吸熱反応を伴う.この性質を利用し,ヒートポンプシステムに用いられる.温度・圧力などの条件をかえると水素を取り出すことができるので,水素の貯蔵・輸送容器,燃料電池ニッケル-水素電池(ハイブリッド型電気自動車(HEV)用電源),水素を燃料とする自動車にも利用される.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「水素吸蔵合金」の意味・わかりやすい解説

水素吸蔵合金
すいそきゅうぞうごうきん
hydrogen storing alloy

水素化物を形成し,熱の出入りに伴って水素を吸収・放出する合金ランタンミッシュメタルなどの希土類系(→希土類元素),チタン系,マグネシウム系などがある。水素吸蔵合金を用いることで,水素のままの場合よりコンパクトで安全性の高い水素貯蔵装置をつくることができる。また電池電極ヒートポンプにも利用される。日本でも新エネルギー・産業技術総合開発機構主体となって開発が進められている。水素自動車への利用という可能性も追求されているが,水素吸蔵効率の悪化など困難な点も多い。

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知恵蔵 「水素吸蔵合金」の解説

水素吸蔵合金

水素をよく吸収できる金属や合金。吸収された水素は、金属水素化物となる。ボンベに詰めたり液体水素として貯蔵するのに比べて安全性が高く、小型軽量化が可能。希土類ニッケル系合金が代表的で、充電式ニッケル水素電池の負電極材として実用化されている。水素を含む混合ガスから水素を分離し精製する水素分離膜の役割もある。実用的な膜として耐久性と特性の優れたパラジウム(Pd)‐銀(Ag)合金が知られている。

(岡田益男 東北大学教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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