語源については、( イ )みずみずしい茎の意で筆のたとえ。( ロ )手紙に玉をつけた梓の木を持たせて使いのしるしとし、その梓をみずみずしい木という意で消息文のことをいい、転じて筆跡または筆にもいう。( ハ )植物「コウボウムギ(俗に筆草という)」のことで、その古い地下茎の先端部が筆の穂の形をしているので、切って筆先に用いるところからなど、諸説ある。
筆跡や手跡、消息の文や手紙、筆の意。語源には諸説あり、みずみずしい茎の意からとしたり、また昔、手紙をつけるアズサの枝をみずみずしい木とみなし、転じて筆跡、筆の意となったことからとし、また植物のコウボウムギ(別名フデクサ)の古い地下茎が筆の穂の形なので、これを切って筆としたことからなどとする説がある。いずれも平安時代以後の用法であるが、とくに「水茎」を筆、「水茎の跡」で文字・筆跡を意味する例が多い。奈良時代では「水茎の」の形で「岡」「水城(みずき)」にかかる枕詞(まくらことば)として用いられ、岡にかかる場合はミズクキの生えている岡の意により、水城(水辺の防御用土塁、水濠(すいごう))の場合は同音の繰り返しによってかかるとされている。
[藁科勝之]
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