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 て

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説


日本音楽用語。楽器を手で弾いたり,打鳴らしたりすることから,声の旋律 (節) や語りに対し,楽器の旋律をいう。さらに各種の楽器の演奏技法,それに伴う旋律型・リズム型について用いられる。歌と歌の間の間奏部分を特に「合の手」というが,それが発展し長くなったものを地歌では「手事」という。

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デジタル大辞泉の解説

しゅ【手】[漢字項目]

[音]シュ(呉) ス(呉) [訓]て た
学習漢字]1年
〈シュ〉
て。「握手義手挙手触手繊手双手徒手入手拍手落手
手でする。手ずから。「手記手芸手交手写手術
手わざ。腕前。「手段手腕悪手凡手魔手妙手
仕事や役割りをもつ人。「歌手国手射手助手選手敵手投手名手
〈て(で)〉「手柄手順手錠手配(てはい)相手勝手柏手(かしわで)後手(ごて)仕手素手(すで)把手(とって)深手(ふかで)山手若手
〈た〉「手綱
[難読]上手(じょうず)手弱女(たおやめ)手水(ちょうず)手斧(ちょうな)手数入(でずい)り下手(へた)御手洗(みたらし)右手(めて)左手(ゆんで)弓手(ゆんで)

た【手】

《「て(手)」の交替形》て。多く、他の語の上に付いて複合語をつくる。「枕」「折る」「なごころ」

て【手】

[名]

㋐人体の左右の肩から出ている長い部分。肩から指先までをいう。俗に動物の前肢をいうこともある。「を高く上げる」「袖にを通す」「の長い猿」
㋑手首、手首から指先までや、手のひら・指などを漠然とさす。「に時計をはめる」「火鉢にをかざす」「でつまむ」
器具などの部分で、手で持つようにできているところ。取っ手・握りなど。「鍋の」「急須(きゅうす)の
植物の蔓(つる)をからませるための木や竹の棒。「竹をアサガオのにする」
1のように突出して動くもの。「火のが上がる」
実際に1のように作業や仕事を行うもの。
㋐労働力。人手。「が足りない」「女一つで子供を育て上げる」「男
㋑仕事をする能力。「に職をもつ」
人が1を使ってすること。また、人の行為を漠然という。
㋐仕事。作業。「裁縫のを休める」
㋑手数。手間。「のこんだ細工」「のかかる部下」
㋒他人に関与すること。「出し」
㋓武器を使って傷つけること。転じて、戦いなどで受けた傷。「負い」「深(ふかで)」

㋐文字を書く技法。筆法。転じて、書かれた文字。筆跡。書風。「人のをまねる」「紀貫之(きのつらゆき)の」「女の手紙」
㋑茶器などで、その手法になるもの。「三島(みしまで)の茶碗」
㋒能楽・舞踊などの所作。手振り。「指す引く
㋓音曲で、調子や拍子をとる手法。また、器楽の奏法。「合いの」「事」
㋔武芸などの技。「相撲の四十八

㋐勝負事などで、手中にあるもの。手持ちの札・駒など。手の内。「を明かす」「相手のを読む」
㋑囲碁・将棋などで、石や駒を打つこと。また、その打ち方。「堅いで攻める」「先
事を行うための手段・方法。「きたないを使う」「そのは食わない」「打つ
10
㋐所有すること。「人のに渡る」
㋑支配下。監督下。「ライバル会社のの者」「犯人のから人質を救う」
11
㋐ある方面や方角。また、その方面の場所。「行くをさえぎる」「山の」「上(かみ)
㋑ある方面に配置した軍隊。「寄せの軍勢」「先(さき)
12 ある種類に属する人や物。「そのの品は扱わない」「厚(あつで)の生地」
13 器物の左右に分かれた部分。
㋐几帳(きちょう)などの横木。
「几帳の―のさし出でたるにさはりて」〈・四九〉
㋑長旗のへりについている、竿(さお)につけるための緒(お)。
「互ひに旗の―を下ろして、東西に陣を張り」〈太平記・一五〉
㋒雁股(かりまた)の矢じりの左右に突き出た部分。
「―六寸、わたり六寸の大がりまた」〈保元・上〉
14 風采(ふうさい)。体裁。
「その跡から―のよき一連れ」〈浮・織留・四〉
15 江戸時代の雑税の一。山手野手川手など。
16
㋐その事物を機械などを用いないで作る意や、その人が自分自身でする意を表す。「料理」「打ち」「づくり」「弁当」
㋑その物が、持ち運びや取り扱いに容易な小型のものである意を表す。「斧(おの)」「帳」「箱」
㋒その動作をする人、また特に、そのことにすぐれた人の意を表す。「嫁のもらい」「語り」「やり
[接頭]形容詞・形容動詞に付いて、その意味を強めるのに用いる。「堅い」「ぬるい」「短」
[接尾]助数詞。
碁や将棋などの着手の回数を数えるのに用いる。「数先をよむ」
矢2筋を一組みとして数えるのに用いる。
「鷹の羽にてはいだりける的矢一―ぞさしそへたる」〈平家・四〉
相撲の番数を数えるのに用いる。
「相撲出でて五―、六―ばかりとりて」〈宇津保・俊蔭〉
舞の数を数えるのに用いる。
「一―舞うて東の方の賤しき奴ばらに見せん」〈義経記・八〉
[補説]作品名別項。→

て【手】[作品名]

高村光太郎による彫刻作品。大正7年(1918)制作のブロンズ塑像(そぞう)。東京国立近代美術館所蔵。

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百科事典マイペディアの解説

手【て】

上肢全体を意味することもあるが,普通は上腕と前腕を除いた末端部をさす。手根(しゅこん)(手首),中手(ちゅうしゅ)およびからなる。中手の腹面を手掌(しゅしょう)(手のひら),背面を手背(しゅはい)(手の甲)と呼ぶ。

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世界大百科事典 第2版の解説

て【手】

手ということばには二つの意味がある。一つは広義の用法であり,俗の呼び方でもあって,上肢全体を指す。もう一つは狭義の用法であり,解剖学用語でもあって,手首から先を指す。このことばは主にヒトについて用いられるが,他の動物に対してヒトになぞらえて使われることも多い。類人猿その他の高等霊長類にふつう〈手〉の語が当てられるのは,彼らがヒトに似た〈手〉で器用に物を取り扱うからである。またときには,食物を〈両手〉で持って食べるリスやネズミなどにもこの語が応用される。

て【手】

日本の技芸の用語。事を行うのに手を用いるところから,その方法や技術についていい,それぞれの技芸で単独または他の語と複合して術語的に用いられる。書道,音楽,舞踊,遊戯(碁,将棋,双六など)等においてよく用いられるが,その概念には多少の異同がある。書道では筆法から転じて書かれたものそのものについてもいう。音楽,舞踊では,特定の技法から転じて,その型ないしその型による特定の部分ないし楽曲をもいう。 音楽では,(ふし)が声楽面についていうのに対して,手は器楽面についていうことが多く,手付(てつけ)(器楽部分の作曲・編曲。

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大辞林 第三版の解説

た【手】

〔「て(手)」の交替形〕
て(手)。多く「手綱たづな」「手折る」「たなごころ(掌)」など複合した形でみられる。

て【手】

[1] ( 名 )
人体の肩から先の部分。手首・てのひら・指先などをさすこともある。また、動物の前足をいうこともある。 「 -を上げる」 「 -が触れる」 「おたまじゃくしに-が生える」
形状や機能が、ヒトのに似ているもの。
器物の取っ手。 「急須の-」
植物の蔓などをからませるための竹など。
本体から突き出たもの。几帳きちようの横木・幕を棹に付けるための緒など。 「鍵の-」
を働かせて様々な事をすること。
事を行なったり、物を作り出したりすること。また、その時の手の使い方。 「巨匠の-になる作品」 「司直の-にゆだねる」 「追及の-がゆるい」
働く人・力。 「 -が足りない」 「 -を貸す」
事を処理する能力。 「 -に余る」
手間。手数。 「 -がこんだ細工」 「 -ばかり掛かる」
人との結びつき・つながり。 「 -を切る」
事を行うための方法・技術など。
方法。手段。また、策略。 「その-には乗らない」 「 -の付けようがない」
技量。腕前。 「 -が上がる」
技芸などの一定の型。
囲碁・将棋・相撲などで、攻め方・受け方。 「 -のない将棋は負け将棋」 「四十八-」
舞や踊りの手振り。 「さす-引く-」
日本音楽で、(節ふしに対して)楽器の演奏。また、その旋律や音型。定型化されて慣用される。 「古い三味線曲に箏の-を付ける」 「大薩摩の-」
字を書くこと。また、筆跡・書風。 「一つには御-を習ひ給へ/枕草子 23
(手に握ることから)
所有。保持。 「大金を-にする」
支配下にあって思い通りに使える人や軍勢。 「 -の者」
トランプや花札で、持っている札。手札。
方向。方面。 「山の-」 「行く-」
いくつかに分けたうちのある種類。また、ある手法・技法によるもの。 「この-の品」 「高麗-」
一方面の部隊。 「此の-の大将軍は何ものぞ/平治
ものが現れ出ること。また、その勢い。 「火の-」 「水の-」
代金。代償。 「酒-」
受けた傷。 「 -を負う」
種々の語と複合して名詞をつくり、手と関係する様々の意味を加える。
機械に頼らずに人の力によること、また他人の力を借りずに自分の力によることを表す。 「 -料理」 「 -づくり」
小型で手の内に入る、または手で持って使えることを表す。 「 -帳」 「 -斧おの
が付いていることを表す。 「 -鏡」
身近であることを表す。 「 -道具」
そのことをする人。また、特にそのことに秀でた人を表す。 「語り-」 「小太刀こだちの使い-」
形容詞・形容動詞の上に付いて、接頭語的に用いられ、物事の処理の仕方にかかわることを表す。また、転じて、下の語の意味を強めるのにも用いられる。 「 -厚い」 「 -ごわい」 「 -ぬるい」 「 -広い」 「 -短に話す」
( 接尾 )
助数詞。
囲碁や将棋で石や駒を動かす回数を数えるのに用いる。 「三-で詰む」
甲矢はや・乙矢おとや二本を一組として、矢の数を数えるのに用いる。 「的矢一-」
[句項目]
手が上がる手が空く手が空けば口が開く手が有る手が要る手が後ろに回る手が掛かる手が切れる手がこむ手がすく手が付かない手が付く手が付けられない手が出ない手が届く手が無い手が長い手が入る手が入れば足も入る手が離れる手が早い手が塞がる手が回る手が焼ける手が悪い手と身になる手取り足取り手に汗を握る手に余る手に合わない手に入る手に入れる手に負えない手に落ちる手に掛かる手に掛ける手に帰する手にする手に付かない手に手を取る手に取るなやはり野に置け蓮華草手に取るよう手になる手に乗る手に入る手に渡る手の切れるような手の施しようがない手の舞い足の踏む所を知らず手八丁口八丁手は見せぬ手も足も出ない手もすまに手も無く手を空ける手を上げる手を合わせる手を入れる手を打つ手を替え品を替え手を反す手を搔く手を掛ける手を貸す手を借りる手を切る手を砕く手を下す手を組む手を加える手を拱く手を下げる手を締める手を摺る手を袖にする手を染める手を出す手を携える手を支える手を束ね膝を屈む手を突く手を尽くす手を付ける手を通す手を取り合う手を取る手を鳴らす手を握る手を抜く手を延ばす手を離れる手を引く手を翻せば雲となり手を覆せば雨となる手を広げる手を回す手を結ぶ手を揉む手を焼く手を緩める手を汚す手を分かつ手を煩わす

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説


解剖学では上肢を腕(うで)(上腕(じょうわん)と前腕(ぜんわん))と手とに区分し、手は手首から先をいう。俗に、手足などといって、大まかに下肢に対して上肢を「手」と表現することもある。手は、ほぼ四角形の扁平(へんぺい)な部分として手首の先に広がるが、屈曲させて凹面をつくる部分を手の掌面(しょうめん)(手掌、たなごころ)とよび、凸面側を手の背面(はいめん)(手背、手の甲)とよぶ。手の扁平部分の遠位縁からは、5本の指(五指)が出る。五指のうち、母指(ぼし)(第1指、親指(おやゆび))がもっとも太く、かつ短い。中指(ちゅうし)(第3指)がもっとも長く、以下環指(かんし)(第4指、薬指(くすりゆび))、示指(しし)(第2指、人差し指)、小指(しょうし)(第5指)の順に短くなる。各指の末端の背側部には、皮膚の表皮が角化してできる爪(つめ)が付着し、指の先端を保護している。手掌面の皮膚には、多数のしわや溝が縦横に走っている。このうち、横に走る太いしわは手掌や指を屈曲したときに生じ、運動皺襞(しゅうへき)(慣用では「うんどうすうへき」と読む)とよぶ。これらのしわは、手相学ではいろいろの意味をもつものとして取り扱われているが、科学的な根拠はない。手掌面には細い溝(皮膚小溝)と各小溝の間の高まり(皮膚小稜(しょうりょう))とが平行して走っている。その方向は、各個人に特有な紋様(掌紋)をつくっている。また、指の先端の紋様は指紋(触紋)とよばれ、これも各個人に特有な走行を示す。掌紋、指紋はともに個人識別に利用されている。指紋は胎生3か月から4か月に出現する。皮膚小稜の高いところには、汗腺(かんせん)の導管の開口部、すなわち汗口が配列している。
 手掌面を見ると、母指と小指の長軸に沿った部分、第2~第4指の基部、各指の末節中央部のそれぞれに、円形あるいは楕円(だえん)形をした広い皮膚隆起が認められる。これを、それぞれ手根小球(橈側(とうそく)は母指球、尺側(しゃくそく)は小指球という)、指間小球、指小球とよんでいる。また、これらを総称して触球とよぶが、この部分には神経終末が豊富に分布し、触覚が鋭敏である。手掌面には毛、脂腺がない。また、手掌面の皮膚にはメラニン色素がないため、他の皮膚部分よりも白くなる。手掌面の汗腺の数は1立方ミリメートル当り約2個であるが、手背では約1.5個、示指先端では3個ほどとされる。[嶋井和世]

手の骨格と筋

手の構造の基礎となり、手の運動の支えとなる骨格(手骨(しゅこつ))は、約30個の骨からできている。手首(手根)の部分には8個の手根骨が配列する。手根骨は、前腕の長軸方向と直角に位置し、4個ずつがほぼ平行に並んで配列している。手根骨の遠位列と連結する骨が中手骨で、細長い5個の骨から構成される。中手骨は手掌の骨格となっている。各指の骨格となるのが指骨である。指骨は、母指が2個、他の指はそれぞれ3個からなっている。中手骨と直接連結する指骨を基節骨といい、順次先端に向かって中節骨、末節骨とよぶ。母指は基節骨と末節骨だけで、中節骨が欠ける。遠位列の手根骨と中手骨との関節(手根中手関節)や中手骨と基節骨との関節(中手指節関節)は、多軸的に動いて、手首や指の複雑な運動を可能としている。
 手の骨格を動かす筋肉は、ヒトではとくに発達しており、精緻(せいち)巧妙な手の運動の原動力となっている。このことは、霊長類、とりわけヒトにおいて、その進化に大きな役割を果たしてきた。手の運動をつかさどる筋肉(骨格筋)は、前腕と手掌とにあり、ともに横紋筋である。そして、手の筋肉はすべて手掌側にある。母指を思いきり反らして、母指を外転し、伸展させると、手背の母指側で手首から母指方向に向かって三角状のくぼみができる。これを「解剖学的嗅(か)ぎたばこ壺(つぼ)」とか「嗅ぎたばこ入れ」(タバチュール)という。これは、長母指伸筋と短母指伸筋の両腱(けん)に挟まれてできるくぼみである。このくぼみの底で、橈骨動脈の拍動を触れることができる。[嶋井和世]

動物の手

脊椎(せきつい)動物の前肢末端部分をいう。物をつかむ機能をもっている霊長類について用いられる語であるが、他の動物に用いられる場合は、やや擬人化した意味でこの部分をよぶ。上腕・下腕部を除いた手首・手のひら・指からなり、それぞれ腕骨・掌骨・指骨を含み、複雑な筋肉が発達している。動物の種類によって手の解剖学的構造に多くの変化がみられる。たとえば、樹上生活を営むものでは手が発達し、指が長く、先端部を保護するつめが伸びている。コウモリでは第1指(親指)に鉤(かぎ)づめがあり、他の指は長く伸び、それらの間に飛膜が発達している。ウマでは第3指骨だけが非常に発達している。クジラやオットセイの手は、水中生活に適応して退化し、魚類のひれに似た形になっている。魚類のひれと哺乳(ほにゅう)類の手は相同器官である。[川島誠一郎]

手の象徴的意味

手が宗教的観念と関連して象徴的意味をもつ現象は広くみられる。霊的存在への訴えとして手を伸ばす、打つ、指を特定の型に組む(密教の印相など)などの動作をとることが多い。妖術(ようじゅつ)師が手で触れ、指示し、凝視することにより生じる危害や凶眼から身を守る目的で指を組んで対抗する、などの慣行も広くみられる。何かを手に握って生まれた子供が特別な能力をもつとする文化も多い。岩の手形状のくぼみを役小角(えんのおづぬ)、弘法大師(こうぼうだいし)、諏訪(すわ)信仰、雷神、弁慶などと関係づけるなどの説話がある。
 人体の他の部分から切り離した手だけを描写して、特定の宗教的意味をもたせた最古の例は、エジプト新王国イクナートンの改革宗教で主神アトンを象徴した太陽光線先端の手であろう。ユダヤ・キリスト教では、紀元前2世紀の成立とされる『旧約聖書』「ダニエル書」5章の「運命を予告する手」をはじめとして、偶像的表現を避ける目的で手だけで最高神を表現する文化的伝統が形成された。ユダヤ・キリスト教美術史上の「神を表す手」は、アルサケス朝パルティアの宗教美術の影響を受けた3世紀のメソポタミア(ドゥラ・エウロポス遺跡)で確認され、中世キリスト教絵画に繰り返し用いられた。4~5世紀以降には按手礼(あんしゅれい)がキリスト教の秘蹟(ひせき)とされ、この文化的伝統での手の特別な意味が確立した。聖書の上に手を置いて誓約するキリスト教の慣行、指を伸ばした手形を建物、とくに戸口の上部につけて妖術的危害の侵入を防ぐなどのアジア・環地中海地域の風習はこの伝統と関連する。
 右手を神聖かつ有力で幸運な手とみなし、左手を劣位、不浄視する「右手の優越」現象は、手の象徴主義の重要テーマである。アジアの多くの地域では、排泄物(はいせつぶつ)処理に左手を用いる習慣とも結び付き、とくにこの原則を重視する。台湾の高砂(たかさご)族の右手(右肩)の優越はよく知られている。中世南インド(タミル地方)では、王国内の職業集団を都市手工業者を中心とする左手群と、農業経営者を中心とする右手群に二分する制度が発達し、祭礼時の2群の衝突事件と王権による事件調停の記録が古くからある。ただし、右手の武装を暗示する左手での握手の敵対性は右手の優越以外からも説明できる、などの問題もある。[佐々木明]
『R・エルツ著、吉田禎吾他訳『右手の優越』(1980・垣内出版)』

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世界大百科事典内のの言及

【手形】より

…手形は一定の金額の支払を目的として発行される有価証券である。手形という語は古くは一般に証書・証文をさしていたが,これは証書類に署名に代えて手指を押捺(おうなつ)する風習に由来するといわれる。…

【道具】より

…人間が特定の目的を実現しようとする場合,媒介として用いる物的な手段をいう。この意味での〈道具〉の語は室町時代以後の日本語で,それ以前や中国の漢語では仏教で用いる器具を指した。…

【一節切】より

…また中村宗三著《糸竹初心集》(1664),村田宗清著《洞簫曲(どうしようのきよく)》(1669),著者不明《紙鳶(いかのぼり)》(1687,《糸竹大全》に収められている)の3種の入門独習書の出版が見られ,当時の一節切の流行を物語っている。それらを見ると,17世紀前半までの一節切の音楽は独奏曲(これを〈手〉という)が主体であったが,17世紀後半には流行歌(はやりうた)・踊り歌の伴奏や箏・三味線との合奏(これらを〈乱曲〉という)が盛んになったことがわかる。 しかし,流行は長くは続かず,18世紀に入るとほとんど吹かれなくなる。…

【フシ(節)】より

…この単位は,規模は大小さまざまだし,旋律の形も半ば固定しているものと,大まかな枠組みのみあって細部の変化が著しいものとがある。また,フシは〈〉の対概念として説明されるものでありながら,近世邦楽におけるこの意味でのフシは,手と一体といってもよいほど,密接な関係にある。義太夫節では,地合(じあい)の進行に小段落をもたらすフシ落チという型を,丸本では単にフシと表記するほか,〈ハルフシ〉〈フシハル〉〈本ブシ〉など特定の旋律を表す語がある。…

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