汎ゲルマン主義(読み)ハンゲルマンシュギ

デジタル大辞泉 「汎ゲルマン主義」の意味・読み・例文・類語

はんゲルマン‐しゅぎ【汎ゲルマン主義】

ドイツ盟主となり、ゲルマン民族による世界制覇を実現しようとする思想運動。19世紀末から、ドイツ帝国が政策化してバルカン中近東などへの進出をはかったが、第一次大戦挫折ざせつ。その多くナチスによって継承された。汎ドイツ主義

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精選版 日本国語大辞典 「汎ゲルマン主義」の意味・読み・例文・類語

はんゲルマン‐しゅぎ【汎ゲルマン主義】

  1. 〘 名詞 〙 ( ゲルマンは[ドイツ語] Germane から ) ゲルマン系諸国民の力をドイツ帝国のもとに結合して海外に広大な植民地を開発し、ドイツの世界制覇を実現しようとする思想と運動。汎スラブ主義対抗オーストリアとの合邦、中欧・バルカンの支配を重視して三B政策を推進。その主張の多くはナチスに継承された。汎独主義。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「汎ゲルマン主義」の意味・わかりやすい解説

汎ゲルマン主義
はんげるまんしゅぎ
Pan-germanism

19世紀末から、ドイツ人の間に生じてきた民族的優越膨張を主張するイデオロギーとその運動を、汎スラブ主義になぞらえて、汎ゲルマン主義という。すなわちゲルマン系の全民族には共通の同族意識があるはずであるとする想定が、汎ゲルマン主義と称された。また、ドイツ語を日常語とするすべての人々を一つの国家に統合しようとする企てもこれに数えられる。さらに、ドイツから生じてきた国家主義的運動、とくに全ドイツ連盟(1891~1939)や第二次大戦前のナチスの運動に呼応して、外国に居住するドイツ人の間で使用された政治的スローガンがあげられる。後二者には、バルト海沿岸、東ヨーロッパ各地、オーストリアなどに居住するドイツ人の強い関心が集まり、ドイツの帝国主義的膨張、ヨーロッパ覇権、世界政策と対応して、汎スラブ主義に対抗するイデオロギー的政治運動とみなされた。

[岡部健彦]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「汎ゲルマン主義」の意味・わかりやすい解説

汎ゲルマン主義
はんゲルマンしゅぎ
Pan-Germanism

第1次世界大戦前ドイツ帝国のもとに国外に住む全ゲルマン民族の結合をはかり,それによってドイツ民族の生活圏の拡大を実現しようとする主張。概念としては汎スラブ主義ほど明確ではなく,ドイツの世界政策推進のためのドイツ勢力の東方進出を意味し,むしろ外国人によって使われた。ドイツ人自身の意識的運動としては,「全ドイツ主義」を主張する全ドイツ連盟によって具体的に推進された諸運動および思想がこれにあたり,全ドイツ連盟は新聞や出版物によって政府外交政策を妨げ,この主義のもとでウィルヘルム2世による世界政策が進行した。第1次世界大戦勃発後は併合政策を主張し,その主張の多くはナチスに受継がれた。

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