改訂新版 世界大百科事典 「有機化学工業」の意味・わかりやすい解説
有機化学工業 (ゆうきかがくこうぎょう)
化学工業の一分野。化学工業を大きく素材型化学品工業と加工型化学品工業に分けたとき,有機化学工業は化学肥料工業,無機化学工業とともに素材型化学品工業を構成している。有機化学品工業には石油化学系基礎製品,脂肪族系中間製品,メタン誘導品,コールタール製品,環式中間物・合成染料・有機顔料,プラスチック,合成ゴムなどの製造業などが含まれるが,その中核は石油化学工業である。石油化学工業が本格的に成長したのは昭和30年代に入ってからである。それまでの石炭や石灰を中心とした化学工業から石油による化学工業への転換を図ると同時に,外国技術の導入を積極的に行うことによって日本の石油化学工業は急成長を遂げた。昭和40年代には,国際競争力の強化を図るために設備の大型化が極限まで追求された。ところが1970年ころから,設備投資が行き過ぎとなり供給過剰状態に陥り,2度にわたる石油危機により原料である石油価格高騰も重り,長期にわたる不況いわゆる構造不況に陥った。
日本の経済に占める有機化学工業製品の役割は大きく,ナフサを原料とするエチレン,プロピレン,芳香族などの基礎製品は,合成樹脂,合成繊維,合成ゴム,塗料,合成洗剤,界面活性剤の原料として,生活用品や工業用品に応用されている。
有機化学工業の規模を《工業統計表》でみると,出荷額が7兆9448億円で化学工業全体の34%を占めている(1995)。
執筆者:古矢 真義
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報