沿岸警備隊(読み)えんがんけいびたい

改訂新版 世界大百科事典 「沿岸警備隊」の意味・わかりやすい解説

沿岸警備隊 (えんがんけいびたい)

密貿易,密出入国の取締り,海難救助,航行安全などを主任務とする組織をいい,正規軍(一般には海軍)の一部隊である場合と,正規軍とは別個に,軍隊に準じて組織された集団である場合とがある。後者典型はアメリカの沿岸警備隊U.S.Coast Guard密漁の監視,取締りにも任じている。沿岸警備隊の前身は1790年に関税業務のために創設され,その後海難業務などが付加され,1915年に沿岸警備隊となった。士官隊員の勤務や服装はアメリカ海軍のものと同じで,独自に士官養成などの学校を設置している。海上パトロールに任ずる艦艇カッターと呼ばれ,小型のものが多いが,領海,経済水域の拡大に伴い,逐次大型化が図られ,砕氷艦も装備している。平時は運輸省に属しているが,戦時または非常事態には,命令により海軍の指揮下に入って行動することとなっており,ベトナム戦争では南ベトナム沿岸で海軍の一部として作戦に従事した。

 日本では沿岸の警備を第2次世界大戦前は海軍が,戦後は海上保安庁が行っており,状況によっては海上自衛隊も警備行動をとることがある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「沿岸警備隊」の意味・わかりやすい解説

沿岸警備隊[アメリカ合衆国]
えんがんけいびたい[アメリカがっしゅうこく]
United States Coast Guard

海洋法の執行を担当するアメリカ軍内の軍事組織。約3万 5000人の将校と志願兵,および文官で構成される。国土安全保障省の管轄に属するが,戦時には大統領の指揮下に置かれ,海軍の一部として機能する。 1790年,当時の財務長官アレクサンダー・ハミルトンにより徴税海上部隊 Revenue Marine Serviceとして設立された。その後,税関監視船隊 Revenue Cutter Serviceと改称され,1915年に救難隊 (1878設立) と統合されて沿岸警備隊となった。当初は財務省の管轄下に置かれたが,1967年運輸省に移管。 2003年国土安全保障省の管轄に移った。平時の任務は船舶およびその設備の点検,灯台や灯台船,浮標 (ブイ) ,およびロラン局 (→ロラン ) やラジオビーコンなどの電子航行援助システムの管理・運用などである。広範な救助艇のネットワークと,水上艦艇および航空機を備えた捜索救難拠点を有する。戦時の任務としては艦隊の護衛,港湾の警備,輸送要員の配備などがある。沿岸海域を経由してアメリカに密輸される違法薬物の取り締まりの支援も行なう。

沿岸警備隊
えんがんけいびたい
coast guard

自国の沿岸で海事法を執行するとともに,海難救助にあたる海上部隊。小型艦艇,航空機などを装備する。19世紀初めに密貿易の取り締まりを目的に各国で発足した。灯台浮標(ブイ)などの航海支援設備の維持管理も行なう。また運河や湖沼の砕氷や気象観測と発表を任務とする国もある。アメリカ合衆国,イギリス,カナダなどの沿岸警備隊がよく知られており,日本では海上保安庁が沿岸警備隊に相当する。(→沿岸警備隊〈アメリカ合衆国〉)

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百科事典マイペディア 「沿岸警備隊」の意味・わかりやすい解説

沿岸警備隊【えんがんけいびたい】

コースト・ガード(Coast Guard)の訳。米国の自国沿岸警備に従事する組織。1790年創設。平時は財務省,戦時は海軍省所属。日本の海上保安庁に相当する。高速巡視艇のほか多数の救助艇,消防艇などを保有。
→関連項目海上保安大学校

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世界大百科事典(旧版)内の沿岸警備隊の言及

【アメリカ合衆国】より


[統帥と文民統制]
 合衆国憲法の下で,大統領は全軍の最高司令官として,合衆国防衛の最高責任者の地位にある。より具体的には,文民である国防長官,また軍事専門家から構成される統合参謀本部の補佐をうけ,大統領は,陸・海・空軍および海兵隊,州兵の全国組織である護国軍National Guard,沿岸警備隊Coast Guardを統轄,指揮している。また,現代戦が総力戦であるという見地から国防と外交,経済などの一体性を確保するために,大統領の諮問機関として国家安全保障会議が設けられている。…

※「沿岸警備隊」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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