日本大百科全書(ニッポニカ) 「法人格否認の法理」の意味・わかりやすい解説
法人格否認の法理
ほうじんかくひにんのほうり
特定の事案解決に際し、その具体的妥当性を図るため、会社の法人格を否認し、会社と支配株主(社員)とを同一視することをいう。この法理はあくまでも個別事案におけるものであって、会社の解散命令とは異なる。法人格否認の法理には、二つの態様が認められている。その一つは、いわゆる形骸(けいがい)化の場合といわれているものである。すなわち、会社の法人格を否認し、会社と支配株主を同一視することによって、会社財産より弁済を受けられなかった会社債権者が、支配株主に対しても会社に対する債権をもって請求しうるとするものである。もう一つが濫用といわれる場合である。この場合は、会社と支配株主が同一視されることによって、支配株主に対する債権者が会社(財産)にも責任を追及しうると認められたり、会社のなした取引が支配株主の第三者に対する競業避止義務に違反した取引であると認められたりすることになる。
[永井和之]