江戸後期の陽明学者大塩平八郎の主著。上下二巻。1833年(天保4)刊。大塩は37年の「大塩平八郎の乱」で著名であるが、熱烈な陽明学の信奉者でもあった。彼は中江藤樹(とうじゅ)、熊沢蕃山(ばんざん)、三輪執斎(みわしっさい)以後、陽明学が不振であることをおもんぱかり、陽明学を宣揚し、あわせて彼の「良知・太虚(たいきょ)」の哲学を開陳したものである。洗心洞とは彼の私塾の名。本書の特色の一つは、「箚記」(ノート)とはいうものの、本書全体は整然とした体系性を意図して執筆編集されたこと。その二つは、中国とくに明(みん)末清(しん)初の朱陸論争の余波をもろに受けたこと。陸隴其(ろうき)の陽明学批判に反発した彼は、湯斌(とうひん)・彭南(ほうなんいん)の論調を基調に鋭く反論し、500年来の朱陸論に決着をつけようとした。
[田公平]
『相良亨他校注『日本思想大系46 佐藤一斎・大塩中斎』(1980・岩波書店)』
大塩中斎(平八郎)の語録。2巻。1833年(天保4)刊。洗心洞は大塩が自邸に開いた学塾の名で「箚記」はノートの意味。大坂町奉行所与力を退いたのち,陽明学派をはじめ,先儒の言動や道徳的実践,書の語句についての解釈や自身の思索を書き抜き,上巻180条・下巻139条にまとめた。自己と世界を一体のものとして万事を一身にうけとめようとする独特の「帰太虚」説を展開する。「岩波文庫」「日本思想大系」所収。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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