日本大百科全書(ニッポニカ) 「津奈木」の意味・わかりやすい解説
津奈木(町)
つなぎ
熊本県南部、葦北郡(あしきたぐん)にある町。1963年(昭和38)町制施行。町名は「景行(けいこう)天皇が大泊(おおど)港に船をつながれた」との故事に由来する。町域は、津奈木湾奥の干拓地(1967年竣工(しゅんこう))、同湾に流入する津奈川水系沿いの狭長な沖積低地を除けば、そのほとんどが更新世前期の火山岩からなる低山性を呈す九州山地南部で占められている。総面積の70%近い林野はかつての芦北林業(坑木用の松の短伐期林業)の舞台であったが、現在、海岸沿いの傾斜地に甘夏ミカンを中心にした果樹広域濃密生産団地が、内陸部にはスギ、ヒノキの育成林業団地が、それぞれ造成されている。これら第一次産業部門依存からの脱却を目ざして造成された干拓地には、県南最大の総合運動公園が建設され、風光明媚(めいび)な海岸部の芦北海岸県立公園との連携を意図した地域振興が展開している。またリアス海岸を活用したタイ・ハマチ養殖も、内陸部を通る国道3号(肥薩(ひさつ)おれんじ鉄道がほぼこれに並走)から分岐した海岸回りの県道の整備改修に伴って盛んになってきている。津奈川に架かる県指定重要文化財の重盤岩眼鏡橋(ちょうはんがんめがねばし)は肥後石工(ひごいしく)の秀作で、それにちなんだ「彫刻のある町づくり」は、町の新たな個性となりつつある。面積34.08平方キロメートル、人口4254(2020)。
[山口守人]