河川の浸食によってできた開析谷の下流部が沈水して生じた細長い湾と,それらの間の突出した半島からなる屈曲した海岸線をもつ海岸。スペイン北西部ガリシア地方の入江(リアria)あるいはリアの多い地方の名称(Costa de Rias Altas)に由来する。もともとは,ドイツの地理学者F.vonリヒトホーフェンが1886年に,地質構造に支配された谷が海岸線の一般方向と直交して分布する鋸歯状の屈曲の多い海岸をリアス海岸と呼んだが,後にアメリカの地形学者D.W.ジョンソンが1919年に溺れ谷をもつ屈曲した海岸線を一般に沈水海岸線と呼び,河川の開析谷が沈水した場合をリアス海岸線,氷食谷が沈水した場合をフィヨルド海岸線と呼んだ。リアス海岸は陸地の沈降を示す沈降海岸とも考えられていたが,現在は約1.5万~2万年前の最終氷期の低海水準期に河川下流部であった谷地形が,後氷期における世界的な海面上昇によって沈水して溺れ谷となり,リアス海岸を生じたと考えられている。日本では三陸海岸や若狭湾が代表的であるが,三陸海岸には現在の入江や島を縁取って海成段丘が分布しているので,リアス海岸の概形はかなり古くまで(少なくとも約10万年前の最終間氷期以前まで)さかのぼることができるだろう。
執筆者:米倉 伸之
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丘陵性ないし山地性の地域において、陸上侵食によって形成された谷が、海面の上昇あるいは地盤の下降のため沈水してできた海岸。海岸線は湾が連なり、出入りに富んでいる。氷食を受けて形成されたフィヨルドとは成因が違う。また、フィヨルドほど水深が深くない。リアスriasは、スペイン北西のガリシア地方、アストリア地方の山地に発達する細長い入り江の名称リアriaおよびリアの多い地方(Costa de Rias Altas)の名称に由来する。
日本にはリアス海岸が多数存在するが、代表的な地形は、東北地方の三陸海岸、四国西岸、九州北西岸、若狭(わかさ)湾(福井県)などである。リアス海岸の湾頭には、漁港、商港が開け、古くから人々は海洋とかかわってきた。リアス海岸は、リアス式海岸ともよばれた。
[豊島吉則]
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