病人食の一つで,食物を液状にしたものをいう。病人食は,主として消化吸収の程度によって,流動食,分粥(三分,五分,七分),全粥(軟食),きざみ食,普通食に分けられるが,流動食が必要とされる場合を大別すると,(1)消化器系疾患の急性期,消化器系の急性伝染病および中毒,手術後の病人など消化吸収力が著しく弱まっている場合,(2)脳卒中や脳性麻痺など病気が原因で嚥下する力に障害がある場合,(3)小児や老人などかみ砕く力や消化吸収力が十分でない場合がある。
流動食には消化吸収のよい,刺激の少ない食物が選ばれる。昔から用いられているものにおもゆ,くず湯,あめ湯などがあるが,そのほか牛乳,果汁,スープなども流動食である。しかし,必要カロリーをとるためには普通食に比べてたくさんの量を摂取しなければならない。そこで回数を多くするなどの配慮が必要とされるが,長期にわたって,流動食のみで必要なカロリー,バランスのとれた栄養をとることは困難である。したがって,徐々に普通食に近づける努力をするとともに,摂取量があまりにも少ない場合には輸液によって補うことも考慮しなければならない。嚥下が困難なため流動食を余儀なく摂取しているような場合には,食物が気管に誤って入らないような姿勢で(あごを引いて)食べることや,むせて吐いたものなどが気管に入らないように顔を横に向けたり,身体を横向きにする必要がある。意識障害や強度の嚥下障害のため,誤って嚥下する危険がある場合には,チューブを直接,胃に入れて栄養を補給する経管栄養の方法も用いられている。
流動タイプにできる食品は限られるが,近年ではジューサーやミキサーによって普通食に近いものを流動状にすることができ,便利になってきている。また,1㏄当り1calの高カロリーで栄養のバランスを考えてつくられた市販の流動食(缶詰,粉末状)も出回っている。いずれにしても,流動食を必要とする人は食欲がおちている場合が多いので,温度,濃度,味,容器,雰囲気などをくふうし,身体的にも精神的にもできるだけ快適な状態で,楽しく食べられるようにすることによって,消化吸収を高める必要がある。
執筆者:外口 玉子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
病人食の一種で、固形分を含まない流動状の食事をいい、そのまま飲み込める。重湯、葛(くず)湯、果汁、牛乳、卵、スープ、ヨーグルトなどのほか、野菜や果物などもミキサーにかけて裏漉(うらご)しすれば用いられる。普通は経口的に与えるが、鼻から挿入したチューブを介して与えることもある(経腸栄養法)。
[柳下徳雄]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… 食事療法は一般食事療法と特殊食事療法に大別される。
[一般食事療法]
栄養の維持,増進を図ることによって,間接的に治療に役立てる方法で,食事の種類は流動食,粥(かゆ)食,常食に大別される。流動食は,熱性疾患や急性消化器疾患で消化吸収力が弱まっているとき,脳卒中などで嚥下障害があるときなどの患者に与えられる。…
※「流動食」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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