外務省の機関で,外国において本省所管事務を行うもの。大使館,公使館,総領事館,領事館,総領事館分館,領事館分館,政府代表部がある(外務省設置法22,23条)。日本の在外公館は1870年閏10月に公使駐在制度を設け,イギリス,フランス,プロイセン,アメリカに弁務公使を派遣設置したことにはじまる。当初は大・中・少弁務使と正権大・少記の官を置いて,交際事務,留学生の管掌をしていたが,72年10月には特命全権公使,弁理公使,代理公使,書記官と改称した。その後,在外大使館・公使館の数は明治期に19ヵ国,大正期に15ヵ国,昭和期(1945年まで)に21ヵ国に開設された。また,領事館も1870年10月中国の上海に仮領事館が設置されたのをはじめに,締盟各国に設置され,日本および在留日本人のおもに経済的利益の保護・監督などを行った。領事館の数は,出張所,分館を含めて中国に39ヵ所,満州(中国東北部)に42ヵ所と最も多く,イギリスに19ヵ所,アメリカに12ヵ所,ロシア(ソ連)に13ヵ所など25ヵ国254ヵ所を数えたが,第2次大戦終了後いったんすべて閉鎖された。
第2次大戦後,サンフランシスコ講和条約成立(1952)までの間は正常な外交関係をもちえなかったので,GHQの許可を得て,〈日本政府在外事務所〉が外国に設置され,領事的事務にあたった。最初の在外事務所は1950年2月,GHQ覚書によりアメリカ国内に4ヵ所(ニューヨーク,サンフランシスコ,ロサンゼルス,ホノルル)設置された。これに伴って〈日本政府在外事務所設置法〉(昭和25年法律105号)が制定された。この在外事務所は52年4月28日の戦争状態の終結宣言とともに順次大使館に昇格し,65年の日韓条約の締結によりソウルにあった在外事務所が大使館になったのを最後に,在外事務所はすべて消滅した。現在,在外公館には長が置かれ,大使館,公使館,総領事館,領事館,政府代表部の長は,それぞれ特命全権大使,特命全権公使,総領事,領事,特命全権大使とされている。在外公館長は外務大臣の命を受けて,在外公館の事務を総轄する。また,政府代表部には国際連合日本政府代表部,在ジュネーブ国際機関日本政府代表部,軍縮委員会日本政府代表部,経済協力開発機構(OECD)日本政府代表部,ヨーロッパ連合(EU)日本政府代表部がある。
執筆者:星野 昭吉
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外国にあって外交任務を行う国家機関で、駐在国において公務の用に供される公館のこと。日本の場合、大使館、総領事館、政府代表部である。これらの国際法の地位はそれぞれ異なる。国際的には、ほかに公使館、領事館もみられる。国家の外交活動を支える機構は通常外務省であるが、外務省は本省と在外公館によって編成されており、2013年(平成25)1月時点で日本の在外公館は大使館194(うち実館134、兼館60)、総領事館61(うち実館61)、政府代表部9である。在外公館に働く外務省職員は、本省よりも1500人以上多く約3500人である。在外公館は外交の第一線にたつものであるから、その活動が適正かつ効率的に行われることが必要である。これを確保する一手段として、毎年本省から在外公館に査察使が派遣され(外務公務員法16条)、その活動、運営、経理状況、館員の勤務条件などにつき査察を行うとともに、本省との連携の維持・強化のための努力がなされている。なお、海外旅行の際には、旅行先の在外公館の所在地を確認しておくことが必要である。
なお、在外公館の名称や位置、在外公館に勤務する者の給与等を定めた法律として、「在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律」(昭和27年法律第93号)がある。
[広部和也]
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