海洋研究所(読み)かいようけんきゅうじょ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「海洋研究所」の意味・わかりやすい解説

海洋研究所
かいようけんきゅうじょ

海洋学研究を目的とする研究所。海洋学は歴史が浅く、海洋生物学母体として発展してきたため、海洋研究所は20世紀以降にできたものが多い。世界有数のアメリカのスクリップス海洋研究所が、1892年カリフォルニア大学の夏期臨海実験施設創設に始まるように、臨海実験所が発展したものが多い。

 日本では、海洋生物学の研究・実験所は古くからあり、1886年(明治19)三浦半島先端に位置する三崎(みさき)町に臨海実験所ができ、翌1887年より帝国大学臨海実験所として正式に発足した。1897年に油壺(あぶらつぼ)(三浦市三崎町小網代(こあじろ))に移転、現在も同地にあるが、名称は東京大学大学院理学系研究科附属三崎臨海実験所となった。その後、1924年(大正13)には陸奥(むつ)湾に臨む青森県浅虫(あさむし)に東北帝国大学理学部附属施設として臨海実験所(現、東北大学大学院生命科学研究科附属浅虫海洋生物学教育研究センター)が創設された。しかし、総合的な海洋研究所である東京大学海洋研究所(現、東京大学大気海洋研究所)が設立されたのは1962年(昭和37)のことであった。

 海洋学の研究は各研究所ばかりでなく、大学の地球物理学科、海洋関係の学科や、博物館、諸官庁、地方自治団体民間の研究機関施設などでも行われている。また世界の海洋研究所のなかには大学院のコースをもつなど教育面の施設を併置しているところもある。

[半澤正男]

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改訂新版 世界大百科事典 「海洋研究所」の意味・わかりやすい解説

海洋研究所 (かいようけんきゅうじょ)

海洋学についての基礎研究を行う研究所。水産という特別な領域の研究を目ざす水産研究所や,周辺の海での観察や採集をおもな目的とすることが多い臨海実験所とは機能が異なる。アメリカのウッズホール海洋研究所やスクリップス海洋研究所,ロシアの科学アカデミー付属の海洋研究所等はその規模が大きい。これらのほか,イギリスの国立海洋科学研究所,ドイツのキール大学の海洋研究所をはじめ,先進諸国はたいてい海洋研究所をもっており,それぞれ特色のある研究を行っている。このほか,中開発国や発展途上国でも,海に面した国の中には海洋研究所をもっているものも少なくないが,その研究は生物関係に偏している場合が多い。日本では,東京大学に付置された海洋研究所があり,その有する研究船や施設は,文部省関係機関の研究者の共同利用に供されている。また,海に関する技術開発を主として行っている海洋科学技術センターがある。
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百科事典マイペディア 「海洋研究所」の意味・わかりやすい解説

海洋研究所【かいようけんきゅうじょ】

海洋科学の研究機関。世界で150ヵ所を越える。各国とも国立または大学の付属施設が多い。海洋の基礎的・総合的な研究を行うものと,水産を含めた応用面の研究をするものに分かれる。米国のウッズホール海洋研究所,同じくスクリップス海洋研究所,英国の国立海洋研究所,ドイツの国立水理研究所などが大きい。日本では1962年に東京大学海洋研究所が設立され,12の研究部門を有し,研究船白鳳丸をもつ。また海に関する技術開発を主に行う海洋科学技術センターがある。

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