ガラスや金属で作った容器の中に液体(感温液)を封入し,温度による液体の膨張を媒介にして温度を指示させるようにした温度計。容器をガラスで作ったものは,古く17世紀に試作されたのち,さまざまに改良,変形されてきたが,今日もガラス製温度計,またはガラス温度計の名のもとに広く利用されている。また,感温液としてアルコール類(実は,多くの場合石油),または水銀を用いたものが広く普及しているので,それぞれアルコール温度計,水銀温度計と呼ばれる。
ガラス製温度計の構造は,単一の肉厚の管で作られたもの(棒状)と毛細管と目盛板とを支持用の管の中に納めたもの(二重管)とに大別されるほか,簡便な板付温度計,工業計測用の保護枠入温度計などの個別的な呼名で分類されることもある。また,温度計に目盛線を刻むとき(したがって温度の値を読み取るとき)の条件に関連して,設けられた浸没線より下の部分を,測ろうとする温度に保って,目盛定めおよび読取りをする浸没線付きのものと,感温液全体を測ろうとする温度に保って,目盛定めおよび読取りをするもの,つまり浸没線の設けられていない全浸没のものとの区別がなされる。金属製の容器に感温液を封入した温度計の構造は,圧力式温度計と共通するところが多く,温度の指示は一般に指針によって行われる。
水銀温度計は,通常-35~+360℃程度(特別のものでは最低-60℃,最高+750℃程度)の温度を精度よく測るのに用いられる。アルコール温度計は,通常-100~+100℃程度(特別のものでは最低-200℃,最高+200℃程度)の温度を測るのに用いられる。構造の面から見た特徴をあげるとすれば,二重管のものは精度がよく,棒状のものはじょうぶであるといえる。使用に際して,浸没線付きのものはその線より下の部分を,また全浸没のものでは感温液全体を,測定温度に保ち,十分な時間が経過した後に示度を読む必要がある。示度を読むにあたって,見る方向のずれに起因する視差(図2)を避けるよう注意を要する。なお,金属製の容器に水銀を封入した温度計では,感温部と指示部との高さの差から生ずる誤差に注意しなければならない。
ガラス製温度計のうち,体温計は,大量に生産,利用されてきており,健康管理や医療に不可欠とされているが,近年,体温測定用のサーミスター温度計(抵抗温度計の一種)も普及し始めた。一定期間中の最高温度,最低温度の一方または両方を,後から読み取ることができるように作られた液体温度計もある。また,ベックマン温度計は,補助の液だめを備えた水銀温度計で,0.001℃程度の微小温度差の測定に用いられる。
執筆者:高田 誠二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
液体の体膨張率はガラスの体膨張率の数十倍なので,ガラス毛管の下部を膨らませて液体を入れたものは,温度が上昇すると液体が見掛け上も膨張し,毛管部分へ伸びるので温度計として用いられる.水銀温度計,アルコール温度計が普通に用いられているが,とくに低温用にはペンタンを用いたものもある(-200 ℃).この種の温度計には“浸”の印のついたものとついていないものとがある.“浸”の印のついたものはその印のところまで測定すべき温度に挿入したとき,目盛がその正しい温度値を示しているものである.一方,印のないものは温度計全体が測定すべき温度にあるとき正しい目盛を示すので,一部分だけが測定温度にあるときは露出部分の補正が必要となる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加