改訂新版 世界大百科事典 「清俗紀聞」の意味・わかりやすい解説
清俗紀聞 (しんぞくきぶん)
中国,清代の生活習俗を記した文献。6冊13巻。1799年(寛政11)刊。編者中川忠英は徳川家旗本で,1795-96年(寛政7-8)長崎奉行に在職中,同地に滞在した清国人から,清国の風俗習慣を詳細に聞きとり,画師に図絵をかかせ,和文で解説を付したもの。年中行事,居家,冠服,飲食,閭(りよ)学,生誕,冠礼,婚礼,賓客,羈旅(きりよ),喪礼,祭礼,僧徒の13巻に分かち,図絵を付して解説してある。巻頭に林述斎,黒沢惟直(雪堂),中井曾弘の序文(漢文)があり,末尾の跋には,編集に協力した大通事,小通事,画工,清国人の姓名をのせる。本文は変体仮名による和漢混淆文。清国人の郷里が中国の福建,江浙地方であった関係から,17世紀ころの同地方の風俗が中心で,事物の名称には同地方の中国音が片かなでつけてあり,現在からみて貴重な資料である。平凡社〈東洋文庫〉所収。
執筆者:北村 敬直
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報