精選版 日本国語大辞典 「清掻き」の意味・読み・例文・類語
すが‐がき【清掻・菅掻】
- 〘 名詞 〙
- ① 和琴(わごん)の奏法の一つ。もっとも単純で基本的な手法で、全部の弦を一度に弾いて、一本の弦だけの余韻を残すように、他の弦を左指で押える。向こうから手前に弾く順掻と、手前から向こうに弾く逆掻と二通りある。本来は菅をもって掻いたことから出た名称ともいう。
- [初出の実例]「はかなき同じすかかきのねに、万のものの音こもり通ひて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)常夏)
- ② 雅楽の箏の奏法の一つ。基本的奏法で、静掻(しずがき)の別名。食指で二本の弦、中指で五本の弦を、順次定められたリズムで手前に弾き、終わりに親指でしめくくる手法。
- ③ 俗箏(ぞくそう)の曲で、歌詞のない器楽曲。「六段菅掻(菅攬)」など。
- [初出の実例]「玉琴に須賀垣(スガガキ)をのせ、三筋になげぶし」(出典:浮世草子・好色二代男(1684)八)
- ④ 尺八の曲で、初期の俗箏の曲を、虚無僧が編曲したもの。「三谷(さんや)菅垣」「秋田菅垣」など。
- ⑤ 三味線で、第二・第三の二弦を同時に弾く音と、第三弦をすくう音とを交互にチャン・ラン・チャン・ランと弾くもの。江戸の吉原の遊女が、毎夕、店先の格子の中で、ゆっくりしたテンポで弾いた「見世すががき」に始まり、諸種の三味線曲の中に用いられる。歌舞伎の下座音楽では、吉原の場面の幕明きや人物の出入り、せりふの伴奏として用いる。
- [初出の実例]「すががきを弾(ひき)出すと、壁にすはった新造が、猿子ねぶりをはじめ」(出典:洒落本・水月ものはなし(1758)中)
- ⑥ 三味線に挿入される技巧的な合の手の名称。吉原その他の遊里、遊女などを象徴するが、⑤とは違って、テンポが非常に速い。合奏が原則。長唄「吉原雀」や「紀文大尽」にある。