渟田門(読み)ぬたのと

日本歴史地名大系 「渟田門」の解説

渟田門
ぬたのと

古代、瀬戸内海航路であった須波すなみ町と幸崎さいざき久和喜くわきの沖、高根こうね(現豊田郡瀬戸田町)との間の青木あおき瀬戸にあたるとされる。「日本書紀」仲哀天皇二年六月一〇日条に「皇后角鹿つぬがより発ちて行まして渟田門に到り、船の上に食す、時にたひ多く船の傍に聚る、皇后酒を以て海魚に灑ぎたまふ、海魚即ち酔ひて浮きぬ、時に海人多く其の魚を獲て歓びて曰く、聖王の賞ふ魚と、故れ其の処の魚六月に至りて常に傾浮ふこと酔へるが如し、其れ是の縁なり」とある。「芸藩通志」は青木瀬戸の西にある有竜うりゆう島の西、能地のうじ堆で行われる浮鯛漁はこの故事によると伝え、浮鯛の時期は二月から三月で故事とは食違うが、渟田門は青木瀬戸だと断定している。


渟田門
ぬたのと

若狭湾の東に突出した敦賀半島丹生にう琴引ことびき崎から西の常神つねかみ半島に至る海上をいう。「日本書紀」仲哀天皇二年三月一五日条に、天皇が紀伊国に巡行して徳勒津宮ところつのみや(現和歌山市)にいたとき、熊襲が背いたので討つため穴門あなと(現山口県豊浦郡)へ向かった。その時天皇は角鹿つぬが(現敦賀市)にいた神功皇后に穴門で逢いたいとの使いを出した。同六月一〇日条によれば皇后は「角鹿より発ちて行して渟田門ぬたのみなとに到りて、船上に食す。時にたひ、多に船の傍に聚れり。皇后、酒を以てたひに灑ぎたまふ」とある。

この渟田門について伴信友の「若狭国神社私考」は、皇后は角鹿津を出発し「三方の海上より長門へ渡り給へるならむとおぼゆ、渟田門は必ず三方の海に在べし」と断定し、「丹後但馬出雲石見の澳を乗りて長門豊浦郡下関へ渡るなり」と記す。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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