日本大百科全書(ニッポニカ) 「港湾労働法」の意味・わかりやすい解説
港湾労働法
こうわんろうどうほう
港湾における必要労働力の確保、雇用の安定、福祉の増進を目的とする法律。1965年(昭和40)に制定された旧法と1988年制定の新法がある。旧法は昭和40年法律第120号。1965年ころから始まったコンテナリゼーションなど荷役の機械化の著しい進展により、雇用不安が顕在化し、その一方、良質の技能労働力を安定的に確保する必要が高まった。しかし港湾労働は危険が多く、劣悪な労働条件のもとでの過酷な肉体労働として、前近代的な状態のまま長く放置されてきた。雇主の港湾運送業者は零細経営が多く、日ごとに大きく変わる業務量や下請け構造から、日雇労働者に依存する率がきわめて高かった。この法律で日雇労働者の常用化が図られる一方、不就労手当の支給に基づく日雇労働者の所得保障など一定の前進をみた。
1988年(昭和63)に全面的な法改定がされた。新たな港湾労働法は昭和63年法律第40号。港湾労働者の雇用の改善、能力の開発および向上などの措置をとることにより、港湾労働者の雇用の安定、福祉の増進を目的として制定された。
この法律により、(1)厚生労働大臣は、主要港湾ごとに港湾雇用安定等計画を策定すること、(2)港湾労働者の雇用の改善、能力の開発および向上等を促進すること、(3)港湾労働者雇用安定センターを設立し、そこが企業外に全体として確保する労働者を、常用労働者として雇用し、労働者派遣を行う体制を整備することとなった。なお、2000年(平成12)の法改正によりセンター労働者派遣制度は廃止され、港湾労働者派遣制度となった。派遣業務を実際に担当する機関として、(財)港湾労働安定協会が指定され、横浜港をはじめ全国主要港湾で業務を行っている。
[土居靖範]