港湾労働(読み)こうわんろうどう

改訂新版 世界大百科事典 「港湾労働」の意味・わかりやすい解説

港湾労働 (こうわんろうどう)

船舶貨物の揚卸しをする仕事で,港内停泊中の本船から貨物をはしけに(またはしけから本船に)移して運ぶ沖荷役と,岸壁桟橋等で本船やはしけから貨物をトラックや荷さばき場に卸す(またはその逆方向に揚げる)沿岸荷役とがある。沖荷役を行う労働者を沖仲仕ともいう。港湾労働者雇用関係は不安定で,日雇で仕事にあぶれることが多く,手配衆から賃金をピンはねされ,けがや病気は手前もちである。このような事情は,船舶荷役事業本来の〈波動性〉に起因するという見方が一般にはされている。しかし法的には船舶荷役は海上物品運送契約に基づく行為の一部であって,海上運送人(契約により船舶による貨物の運送を引き受けた者)が行うのがたてまえである。ところがこれらの海運会社は自己の経済的負担の軽減をはかるため,船舶荷役業務を中小の業者に請け負わせ,これらの船舶荷役業者が営業利益確保のため,常用労働者の雇用を極力ひかえて,その労働力の大半を日雇労働者に依存してきた。そのことが,港湾労働の不安定性の真の原因であるという批判もある。この意味では,かなりの部分を日雇労働者が担う港湾労働は前近代的な性格を残しているというよりは,むしろ前近代的な衣をまとった資本の利潤追求の現代的な一形態であるということができる。
港湾荷役

このような港湾労働の状況を打破して,港湾運送に必要な労働力を確保するとともに,港湾労働者の雇用の安定と福祉を増進させるため,港湾労働者の雇用の調整を図ることを目的として,1965年に以下の内容をもつ港湾労働法が制定された。(1)この法律は東京,横浜,名古屋,大阪,神戸,関門の各港に適用される。(2)労働大臣は毎年,港湾雇用調整計画を策定し,各港に必要な港湾労働者数を定める。日雇港湾労働者(日々または2ヵ月以内の期間を定めて雇用される者)の数は,常用港湾労働者の雇用促進の妨げにならないように定める。(3)公共職業安定所(職安)は毎年必要な数だけ日雇港湾労働者を登録させ,日雇港湾労働者手帳等を交付する。(4)事業者は原則として,職安の紹介で雇い入れた者でなければ,日雇港湾労働者として使用してはならない。職安は登録者を優先的に紹介する。(5)登録日雇港湾労働者が職安に出頭し,自己のつごうまたは責めに帰すべき理由がないのに港湾運送業の紹介を受けることができず,または紹介されても雇用されなかったときは,雇用調整手当を受け,また必要により職業訓練を受ける。
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百科事典マイペディア 「港湾労働」の意味・わかりやすい解説

港湾労働【こうわんろうどう】

埠頭(ふとう)または船内で船の貨物積卸作業を行う仕事。停泊中の船上ではしけへの積卸作業を行う船上荷役と,岸壁で陸揚げまたは搬入を行う沿岸荷役がある。1965年に港湾労働法が制定されるまでは長く不安定な雇用関係の下におかれた。また,沿岸荷役を行う労働者を浜仲仕(または単に仲仕),船上荷役に従事する者を沖仲仕,総称して仲仕と呼んだ。

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