日本大百科全書(ニッポニカ) 「湯河原沸石」の意味・わかりやすい解説
湯河原沸石
ゆがわらふっせき
yugawaralite
やや産出がまれな沸石の一種。安山岩、玄武岩、粗面安山岩、プロピライト、凝灰(ぎょうかい)岩の空隙(くうげき)や脈中に濁沸石(だくふっせき)などと産し、無色透明で、一方向にやや伸びた菱形(ひしがた)に近い薄い板状の結晶をすることが多い。また、沸石相の変成作用を受けた安山岩ないし玄武岩質凝灰岩や、変質した石英モンゾニ岩の中にも産する。
ほとんどの沸石が酸で溶解(ゲラチン化)するのに、湯河原沸石は不溶である。神奈川県足柄下(あしがらしも)郡湯河原町不動の滝に露出する安山岩質凝灰岩の空隙から、1952年(昭和27)に櫻井欽一(きんいち)と林瑛(あきら)によって発見された。そのほか、静岡県清越(せいごし)鉱山(閉山)付近、宮城県鳴子(なるこ)町(現、大崎(おおさき)市鳴子温泉)鬼首(おにこうべ)、岩手県岩手郡雫石(しずくいし)町葛根田(かっこんだ)など日本では産地が多い。
[松原 聰]