動物の皮で器物をつくり漆を塗ったもの。奈良時代には漆皮箱が多くつくられた。《延喜式》内匠式に当時の施工材が記載されているが,これをみると,まず板で箱型をつくり,牛または鹿皮を貼りつけ麻の紐で締めつけて密着させ,乾かし固めたのち型からはずし,表裏面に布着せを行い苧(からむし)を紐にして縁にまわして補強し,次に下地を施し灰墨(はいずみ)の黒漆を塗って仕上げたことがわかる。正倉院宝物には猪の皮の例があり,布着せを行わない例も法隆寺献納宝物のうちにある。漆皮は8世紀に流行し,12世紀以降はあまり行われなくなった。遺品は法隆寺献納宝物として7品,正倉院に40品,宮内庁に1品,四天王寺に1品があり,東寺,東京芸術大学のものはやや時代がくだる。〈蓮唐草蒔絵経箱〉(奈良国立博物館)は11世紀の唯一の遺品である。漆皮は継目がなく一体性にすぐれるが,生皮は厚さが不均一のため変形しやすい。また特有の〈くも足断文〉を生ずる。
技法上の制約から丸形,長方形が多く,ほとんどが被蓋形式であるが,正倉院には八稜形,亀甲形などがのこされる。加飾法は,法隆寺のものは金銀泥絵が主であるが,正倉院には金銀平文(ひようもん)の例があり,宮内庁のものは内面に油色(ゆうしよく)文様が施される。
執筆者:中里 寿克
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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…おもな遺品には金銀山水八卦背八角鏡,銀壺,銀薫炉,金銀花盤などがある。(2)漆工 漆に掃墨を入れた黒漆塗,蘇芳(すおう)で赤く染めた上に生漆を塗った赤漆(せきしつ),布裂を漆で塗りかためて成形した乾漆,皮を箱型に成形して漆でかためた漆皮(しつぴ),漆の上に金粉を蒔(ま)いて文様を表した末金鏤(まつきんる),金銀の薄板を文様に截(き)って胎の表面にはり,漆を塗ったあと文様を研いだり削ったりして出す平脱(へいだつ)(平文(ひようもん)),顔料で線描絵を施した密陀絵(みつだえ)などの技法が用いられた。遺品には漆胡瓶(しつこへい),金銀平脱皮箱,金銀平文琴,赤漆櫃,密陀絵盆などがある。…
※「漆皮」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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