漉き返し(読み)スキカエシ

デジタル大辞泉 「漉き返し」の意味・読み・例文・類語

すき‐かえし〔‐かへし〕【×漉き返し】

《「すきがえし」とも》反故ほご紙を漉きなおすこと。また、その紙。宿紙しゅくし

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精選版 日本国語大辞典 「漉き返し」の意味・読み・例文・類語

すき‐かえし‥かへし【漉返・漉反】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「すきがえし」とも ) 一度使った紙を原料にして再生紙を作ること。また、その再生紙。墨の色が残って灰色なので薄墨紙ともいわれた。漉返紙。宿紙
    1. [初出の実例]「散状のためにとて御請文も侍き。〈略〉敦通の中将、すき返のれうとてひらにこひとり侍ぬ」(出典:文机談(1283頃)四)
    2. 「すきかへしの鼻紙を入、きゃふの紐がてらに腹帯をしめて」(出典:浮世草子・好色一代女(1686)六)

漉き返しの補助注記

平安時代から行なわれており、蔵人所から出る文書や蔵人が出す文書の多くはこれを用いた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「漉き返し」の意味・わかりやすい解説

漉き返し
すきかえし

使用済みの故紙(こし)を水といっしょに煮て繊維状に戻し、ふたたび紙に漉き直すこと、またその再生紙をいう。『正倉院文書』に「本古紙(ほごがみ)」とあるのはおそらくこの紙のことで、実物らしい紙も残っている。奈良時代から行われたと思われるが、多量に漉かれるようになったのは平安時代末期で、初めは故人遺書などを漉き返したものに経を書き、供養に用いた。やがて廃品再生がおもな目的となり、地位の低下した紙屋院(かんみいん)の主要製品となると、宿紙(しゅくし)とよばれて紙屋紙(かんやがみ)の代名詞のようにもなった。また脱墨が不完全であるために薄墨紙(うすずみがみ)ともよばれ、その雅趣が喜ばれたりもした。中世以後はむしろ下等な懐紙(かいし)となり、京都の西洞院紙(にしのとういんがみ)、江戸の浅草紙、信州(長野県)の上田紙などが庶民に常用された。泉州(せんしゅう)(大阪府)堺(さかい)の湊紙(みなとがみ)も漉き返しの一種で、壁の腰張りによく用いられた。

[町田誠之]

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