日本大百科全書(ニッポニカ) 「濃度(数学)」の意味・わかりやすい解説
濃度(数学)
のうど
potency
power
数学用語。集合の元の個数のことであり、基数ともカージナル数cardinal numberともいう。100個の席をもつ室に三つの空席があれば、97人が室内にいることがわかる。一つの席と1人の人がちょうど一つずつ対応しているからである。二つの集合AとBの間に、Aのおのおのの元にそれぞれBのちょうど一つの元を、Bのおのおのの元にAのちょうど一つの元を結び付けることができるとき、AとBの間には一対一の対応があるという。N個の元をもつ有限集合は、自然数の集合{1,2,……,N}との間に一対一の対応がある。一対一の対応の概念を用いて、無限集合を含む一般の集合の濃度の概念を与えたのはG・カントルである。二つの集合AとBの間に一対一の対応があれば、AとBの濃度は等しいという。Aの部分集合A´とBの間には一対一の対応があるが、AとBの間には一対一の対応がないとき、Aの濃度はBの濃度より大きいという。自然数の全体、整数の全体、有理数の全体などは同じ濃度をもち、これらの濃度を可算濃度という。可算濃度の集合を可算集合という。自然数の集合の全体、自然数から自然数への関数の全体、実数の全体の三つの集合も同じ濃度をもつ。これらが可算濃度より大きいことを、カントルは対角線論法を用いて証明した(1874)。同じ論法を用いて、彼は「集合Aの部分集合の全体からなる集合は、Aよりも大きい濃度をもつ」ことを証明した。この結果、無限濃度が無限個存在することがわかる。可算濃度より大きい濃度を非可算濃度という。無限濃度をアレフ数ともいう。
[西村敏男]