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集合論 しゅうごうろんset theory

翻訳|set theory

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

集合論
しゅうごうろん
set theory

集合を取扱う数学の一分科である。 G.カントルが,1874~98年,ほとんど独自に確立した理論である。カントルは,数学的無限を明確に定義して,無限に関する算数ともいうべき理論を築き上げた。これは算数の対象である有限の数をも含めた無限の数に対する新しい算数であって,その基本になる概念には,集合,対応,あるいは写像,順序などがある。集合論は 20世紀に入ってめざましい発展を続け,特に数学および論理学の両分野において,重要な意義をもっている。

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百科事典マイペディアの解説

集合論【しゅうごうろん】

集合の性質を研究する数学の一部門。19世紀末にG.カントルが創始,古典的集合論の本質的部分を完成したが,彼の集合の定義から論理的に幾つかのパラドックスが生ずることが明らかになり,数学基礎論を生む契機となった。
→関連項目数学デデキント濃度(数学)フォン・ノイマン

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世界大百科事典 第2版の解説

しゅうごうろん【集合論 set theory】

集合として扱われるものを使った推論。集合という概念を定義することを提案し,有効な理論を打ち立てたのはG.カントルである。カントルは次のように集合を定義した。〈集合とは,われわれの直観あるいは思考の対象であって,確定し,かつ明確に区別されるものを一つのまとまりとして集めたものである〉。すなわち,われわれの直観または抽象的思考によって考えうるものを元(または要素)と呼び,そのような元のうち,いくつかの条件を満たすものを集めるというようにして集めたものが集合であって,ある元がその集合に入っているかどうかとか,二つの元が相等しいかどうかということが明確になっていることが要請されているものである。

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大辞林 第三版の解説

しゅうごうろん【集合論】

集合を研究する数学の一分科。1874年以降ドイツの数学者カントルによって展開され、極限および無限の概念が明瞭となった。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

集合論
しゅうごうろん

1874~1897年にカントルによってつくられた数学の一分野。彼は集合を次のように定義した。「集合とは、明確に定義され、かつ互いに明確に弁別できるわれわれの直観あるいは思惟(しい)の対象mを、一つの全体にまとめたものMのことである。mをMの元(げん)という」。集合は、与えられた性質を満たす対象の全体としても定義できる。集合概念は広い概念で、無制限に用いるとパラドックスを引き起こす。公理的な方法、あるいは非常に大きい集合を、集合とは異なる「類」という概念で区別することによって、パラドックスは避けられることがわかった。[西村敏男]

基本概念

集合論のもっとも基本的な概念は、対象mが集合Mの元である(m∈Mと書く)ということである。元を含まない集合を空(くう)集合といいで表す。{a, b,……, m,……}によってa, b,……, m,……を元とする集合を表す。同じ元からなる二つの集合aとbは同じ集合と考えa=bによって表す。aの元がすべてbの元であるときaはbの部分集合であるといいa⊂bで表す。数学の諸概念は集合と集合間の関係a∈bから論理的に構成できる。たとえば自然数0, 1, 2,……はそれぞれ集合,{},{,{}},……と定義される。一般に順序数αはαより小さい順序数全体の集合と定義し、その大小関係α<βをα∈βのこととする。順序対(a, b)を集合{{a}{ab}}のこととすれば、(ab)=(cd)のときa=cかつb=dとなる。集合AとBに対し集合ABを、Aの元aとBの元bの順序対(ab)全体からなる集合とし、AとBの直積(ちょくせき)という。A、Bをそれぞれx軸上、y軸上の実数の全体とすれば、ABは平面上の点の座標の全体となる。Nを自然数全体の集合とする。m, n∈Nなるmとnの間に大小関係m<nすなわちm∈nが成り立つとする。Eをx∈yでx, y∈Nであるような順序対(x, y)の全体からなる集合とすれば、m<nとは(m, n)∈Eのことであり、E⊂NNである。
 このように、集合Aの元の間の関係とは、R⊂AAという集合Rのことと考えれば、「関係」も集合概念になる。集合Aの元の間の関係a<bについて、a<bかa=bのときa≦bと書くことにする。Aの任意の二元xとyについてx≦yかy≦xが成り立ち、x≦yかつy≦xのときx=yで、x≦yかつy≦zのときx≦zが成り立つとき、関係(<)をAの順序という。集合Aの各元の間にこのような順序があるときAを順序集合という。集合Aの元を集合Bの元に対応させる関数F(a)=bは(a, b)∈Fと考えれば、F⊂ABとなるような集合Fのことで、「関数」も集合概念になる。関数の場合には、F(a)=bかつF(a)=cならばb=cという一意性を要求する場合が多い。一意性のほかにF(a)=cかつF(b)=cならばa=bという条件を満たせば、Fは一対一の対応といわれる。集合AとBの間に一対一対応があるというのは、Aの各元にBのちょうど一つの元が、Bの各元にAのちょうど一つの元が対応するような関数FがあるということであるAとBの間に一対一対応があれば、AとBとは同じ濃度をもつといいと書く。AとBの間の一対一対応はないが、Bの部分集合とAの間に一対一対応があれば、Bの濃度はAの濃度より大きいといいと書く。Aの濃度とはAの元の個数に相当する概念で、個数の概念を一般の無限集合にまで拡張したものである。
 nを自然数とすればnはnより小さい自然数全体からなる集合である。nと一対一対応のある集合を濃度nの有限集合、そうでない集合を無限集合という。Nと一対一対応のある集合を可算無限集合という。その濃度を0と書く(はヘブライ文字アレフで、0はアレフゼロと読む)。Aを任意の集合とし、Aの部分集合の全体からなる集合をAのべき集合といいP(A)と書く。このときP(A)の濃度はAの濃度より大きい。これをカントルの定理という。Nを自然数全体からなる集合とすれば、

であり、無限集合の濃度にも無限の段階がある。実数の全体からなる集合の濃度はP(N)の濃度と等しく、これをと書き、連続体の濃度という。Aが順序集合であって、Aのどの部分集合にも最小元があるとき、Aは整列集合であるという。順序数の任意の集合は、順序数の大小関係で整列集合である。自然数に関する数学的帰納法の拡張として、「αを任意の順序数とする。β<αなるすべてのβに対して命題P(β)が成り立つと仮定してP(α)が証明できるとする。このときすべての順序数xに対してP(x)が成り立つ」ことが証明できる。これを超限帰納法という。整列集合Aの各元は順序数によってa0, a1, a2,……, aω, aω+1,……のように並べることができる。後述する選択公理を用いると、「任意の集合Aは、適当な順序をAの元の間に与えることによって整列集合にすることができる」ことが証明できる。これを整列可能定理という。またこの公理を用いると、濃度もその大小の順序で整列集合であることがわかる。0が最小の無限濃度で、αを順序数としてα番目の無限濃度をαと書く。012<……<α<……となる。このとき「がどのαになるか」という問題を連続体問題といい、集合論の基本的な重要問題であった。ゲーデルは1と仮定してもツェルメロ‐フレンケルの公理的集合論と矛盾しないことを証明(1938)、コーエンは1と仮定しても矛盾しないことを証明した(1963)。[西村敏男]

公理的集合論

集合論の公理系を最初に与えたのはツェルメロである(1908)。その後この公理系は拡張され整備されて、今日ツェルメロ‐フレンケルの公理的集合論とよばれるものになった。ここでは「xは集合である」と「y∈x」という二つの概念は未定義概念として扱われる。次にその公理を与える。
(1)空集合が存在する。
(2)同じ元をもつ集合xとyは同じ集合である。これを外延性の公理という。
(3)集合xとyに対して{x, y}は集合である。
(4)集合xに対し集合yが存在して、u∈yとはu∈z∈xとなるような集合zが存在することである。これは集合族xの元である集合の和集合yを与えるものである。
(5)集合xに対しそのべき集合が存在する。
(6)集合xと命題A(u)に対して集合yが存在して、u∈yとはu∈xかつA(u)なることである。これを分出公理という。
(7)A(u, v)を命題とし、任意のu、v、wについてA(u, v)かつA(u, w)ならばv=wとする。このとき任意の集合xに対し集合yが存在して、z∈yとはu∈xかつA(u, z)であるuが存在することである。これは集合xの一意写像yが集合として存在することを主張するもので、フレンケルによって導入された(1922)。これを置換公理という。
(8)空でない集合xが存在して、v∈xならばw∈xなるwでv⊂wかつv≠wとなるwが存在する。このxは無限個の元を含むことになる。これを無限公理という。
(9)A(u)を命題とする。A(x)となるxが存在すれば、A(x)を満たすxで、y∈xなるどのyもA(y)を満たさないようなxが存在する。この公理は次の選択公理のもとでは、……∈x3∈x2∈x1のような無限下降列が存在しないことと同等であり、正則性の公理という。
(10)xを集合族としその各元は空集合でなく、xのどの二元も共通部分をもたないとする。このとき、xの各元のちょうど一つずつの元を含むような集合yが存在する。この集合yをxの選択集合といい、この公理を選択公理という。これはツェルメロによって公理として導入された(1904)。数学の多くの定理の証明に用いられるが、この公理の使用には論議が多い。
 公理(6)と(9)の命題A(u)と(7)の命題A(u, v)は無限個あるので、これらの公理はそれぞれ無限個の公理からできている。[西村敏男]
『松村英之著『集合論入門』(1974・朝倉書店) ▽難波完爾著『集合論』(1977・サイエンス社) ▽西村敏男・難波完爾著『公理論的集合論』(1985・共立出版)』

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世界大百科事典内の集合論の言及

【数学基礎論】より

…数学は矛盾のない理論体系と信じられており,諸科学の中でももっとも厳密な論証を誇るものとして,およそそのよって立つ基盤がゆらぐようなことがあろうなどとは考えられなかった。ところが,19世紀末G.カントルによって創設された集合論はまもなく逆理を生じた(パラドックス)。カントル自身が発見した逆理(1899),ブラリ=フォルティの逆理(1897)やラッセルの逆理(1903)がそれである。…

【無限】より

…ただし無限小,すなわち微分の解釈については議論が分かれ,可能的あるいは現実的とされて決着がつかなかった。 現実的無限の数学の完成は,19世紀後半の集合論にいたってである。集合論は解析学の合理的再建を果たすとともに,無限数の理論たる超限数論への道を開いた。…

【論理学】より

…さらに,個体としての〈もの〉の一定の枠を想定し,その枠内で〈もの〉の組がつくる集合――これを述語という――を考え,これら個体と述語の結合を記述する命題の相互関係を考察する論理学は,(一階の)述語論理学と呼ばれる。また,考えうる最も一般的な集合の規定を主題とする論理学は,集合論と呼ばれる。そして命題論理学,述語論理学,集合論は,たがいに後のものが前のものを包括するという形で展開されるのである。…

※「集合論」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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