日本大百科全書(ニッポニカ) 「灰釉(はいぐすり)」の意味・わかりやすい解説
灰釉(はいぐすり)
はいぐすり
陶磁器の釉薬(ゆうやく)の一種。「かいゆう」と音読することが多い。溶媒として灰を加えた高火度釉(溶点は1250℃が目安)の一種で、もっとも原始的なもの。植物の灰はナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属を含み、これが素地(きじ)の中の長石を溶かしてガラス化する役割を果たす。マツ、カシ、ナラ、クリ、藁(わら)などの灰が主で、それぞれ特色のある発色・光沢を呈する。東洋で発明され発達したが、世界各地でこの系統の発展がみられる。灰が長石を溶かして窯中で自然に釉化したのが自然釉であるが、これを意図的に精製したのが灰釉である。
中国では紀元前1500年ごろの殷(いん)代につくられ、のちに青磁の釉へと進化した。日本では平安時代の9世紀に、愛知県の猿投(さなげ)窯が中国の越州窯青磁を手本に灰釉を開発し、さらに古瀬戸などに発展した。
西洋でもマジョリカ陶器用にブドウの絞りかすを焼いたマルツァコットがイタリアで用いられ、イギリスでも古くから灰釉が用いられている。
[矢部良明]