日本大百科全書(ニッポニカ) 「災害対策本部」の意味・わかりやすい解説
災害対策本部
さいがいたいさくほんぶ
災害が発生、または被災前でも発生のおそれがある場合や、防災推進を図るため必要があると認めるときに設置される機関。災害対策基本法(昭和36年法律第223号)や原子力災害対策特別措置法(平成11年法律第156号)に基づき設置される。災害対策本部には、地方の首長が設ける「災害対策本部」(本部長は首長)、死者・行方不明者が数十人規模と想定される場合の「特定災害対策本部」(本部長は防災担当大臣)、死者・行方不明者100人規模の場合の「非常災害対策本部」(本部長は国務大臣)、大震災などの際に設ける「緊急災害対策本部」(本部長は内閣総理大臣、全閣僚で構成)、原子力発電所事故発生時の「原子力災害対策本部」(本部長は内閣総理大臣)の5種類があり、緊急災害対策本部および原子力災害対策本部はもっとも被害が甚大な災害時に設けられる。同一の災害で緊急災害対策本部が設置された場合、非常災害対策本部は廃止され、その事務を緊急災害対策本部が継承する。災害対策本部は全国の地方整備局などの緊急災害対策派遣隊(TEC-FORCE)や自衛隊の派遣による情報収集・実態把握、広域避難活動、救命・救助活動、避難所設置、救援物資の移送、交通・生活インフラの復旧、仮設住宅の整備、被災地での医療・保健・福祉・教育サービスの提供、産業復興と就労支援、復興計画づくりなどの陣頭指揮にあたる。
緊急災害対策本部は2011年(平成23)の東日本大震災時に初めて設けられた。1995年(平成7)の阪神・淡路大震災後、非常災害対策本部(設置期間1995年1月17日~2002年4月21日)が設置に約4時間、初会合開催までにさらに1時間半がかかったという反省から、東日本大震災では、発生から28分後に内閣総理大臣菅直人(かんなおと)を本部長とする緊急災害対策本部が設けられた。また、福島第一原子力発電所事故も重なったことから、原子力緊急事態の応急対策を推進するため、原子力災害対策本部も初めて設置された。非常災害対策本部は、2018年の「平成30年7月豪雨」や2019年(令和1)10月の「令和元年台風19号」などで設置されている。
[矢野 武 2021年8月20日]