改訂新版 世界大百科事典 「無杼織機」の意味・わかりやすい解説
無杼織機 (むひしょっき)
shuttleless loom
通常のシャットル(杼)を用いないで緯入れ(よこいれ)を行う自動織機の総称で,杼無(ひなし)織機とも呼ばれる。緯糸を内蔵しているシャットルは大きく,重いので,騒音を発し,エネルギーを消費し,かつ飛走速度が小さい。そこで次のような各種の無杼織機が考案された。しかし,緯糸を大量に巻いたチーズなどから直接,一方向にのみ緯入れを行い,毎回緯糸を切断するので,特殊な耳組織を作る必要がある。(1)グリッパー織機gripper loom 代表的なものは1930年,スイスのズルツァーSulzer社で開発されたもので,緯糸の先をグリッパー(形は異なるが洗濯ばさみのようなもの)で挟み,これを飛ばして緯入れを行う。広幅の織物を高速で作ることができる。(2)レピア織機rapier loom 1945年から50年にかけてアメリカのドレーパーDraper社で開発された。ただしイギリスには古くから麻袋用のものがあった。棒(針)の先に緯糸をつけ,これを杼口に挿入するもので,弱い糸でも使用できるが,織幅はあまり大きくできない。左右から同時に棒を挿入して途中で受け渡すもの,棒を薄い板にして杼口の外では曲げておくものなどがある。(3)エアジェット織機air-jet loom 空気の噴流で緯入れするもので,特許は1917年にアメリカでとられたが,実用になるものは49年チェコスロバキアのコーボKovo社で作られた。日本では80年ころから実用機が生産され,紡績糸用のジェット織機として注目されている。(4)ウォータージェット織機water-jet loom 水を噴射して緯入れするもので,1955年チェコスロバキアで開発された。現在では日本の技術が最も進歩し,騒音も少なく,能率も高いが,天然繊維などの紡績糸は水の影響を受けやすく,用途に制限がある。(5)多相(多杼口)織機 緯入れを少しずつずらし,同時に多数の緯入れを行う織機で高能率であるが,まだ普及していない。
執筆者:近田 淳雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報