無水コハク酸(読み)むすいこはくさん(英語表記)succinic anhydride

日本大百科全書(ニッポニカ) 「無水コハク酸」の意味・わかりやすい解説

無水コハク酸
むすいこはくさん
succinic anhydride

酸無水物の一つ。コハク酸塩化アセチルないしはオキシ塩化リンなどの脱水剤と加熱すると、分子内で縮合をおこして1分子の水がとれて、5員環の無水コハク酸を生成する。工業的には無水マレイン酸接触水素化によって製造される。分子式C4H4O3、分子量100.1、融点120℃、沸点261℃、比重1.2340(20℃)。水、エーテルには溶けにくいが、エタノールエチルアルコール)には溶ける。熱水やアルカリ性水溶液によりコハク酸またはその塩になる。

[廣田 穰 2016年11月18日]


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改訂新版 世界大百科事典 「無水コハク酸」の意味・わかりやすい解説

無水コハク(琥珀)酸 (むすいこはくさん)
succinic anhydride


コハク酸の2個のカルボキシル基から1分子の水がとれた構造をもつ環式酸無水物。融点120℃,沸点261℃の無色結晶。減圧下100℃付近で昇華する。クロロホルム四塩化炭素,エチルアルコールに可溶,水,エーテルに難溶。水と加熱するとコハク酸になり,アンモニアと加熱するとコハク酸イミドを生じる。ふつうコハク酸を無水酢酸,塩化アセチル,オキシ塩化リンなどと加熱すると得られるが,工業的には無水マレイン酸の接触水素化によって製造される。有機合成試薬として用いられる。
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化学辞典 第2版 「無水コハク酸」の解説

無水コハク酸
ムスイコハクサン
succinic anhydride

dihydro-2,5-furandione.C4H4O3(100.07).コハク酸を無水酢酸,塩化アセチルなどと加熱すると得られる.融点120 ℃,沸点261 ℃,128 ℃(1.33 kPa).クロロホルム,エタノールに可溶,エーテル,水に微溶.無水アルコールと反応してモノエステルを,アミンとの反応でモノアミドが得られる.種々の合成反応原料のほか,アルキド樹脂接着剤可塑剤の製造原料としても利用される.[CAS 108-30-5]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「無水コハク酸」の意味・わかりやすい解説

無水コハク酸
むすいコハクさん
succinic anhydride

コハク酸の無水物。融点 119℃の結晶。コハク酸を塩化アセチルやオキシ塩化リンなどと加熱すると生成する。

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