無水マレイン酸（読み）むすいまれいんさん（英語表記）maleic anhydride

日本大百科全書(ニッポニカ)

無水マレイン酸
むすいまれいんさん
maleic anhydride

酸無水物の一つ。ベンゼンを気相で酸化すると得られ、工業的にも酸化バナジウムまたは酸化モリブデンを触媒としてベンゼンを空気酸化して製造している。昇華性のある無色の結晶。水に溶かすと加水分解されてマレイン酸になる。アセトンやクロロホルムによく溶ける。共役二重結合をもつジエンとディールス‐アルダー反応を行い炭素6員環化合物を与える。水素化すると無水コハク酸になる。ポリエステル樹脂、塗料、農薬、医薬の合成原料になる。

［廣田　穰　2016年11月18日］

[参照項目] | 酸無水物 | ベンゼン | マレイン酸 | 無水コハク酸

[補完資料] | 無水マレイン酸（データノート）

無水マレイン酸の反応

無水マレイン酸（データノート）
むすいまれいんさんでーたのーと

無水マレイン酸

　分子式　C₄H₂O₃
　分子量　98.1
　融点　　52.6℃
　沸点　　202℃
　比重　　1.48（固体）

[参照項目] | 無水マレイン酸

出典　小学館　日本大百科全書(ニッポニカ)

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

無水マレイン酸
むすいマレインさん
maleic anhydride

マレイン酸の2個のカルボキシル基から，水1分子が除かれた無水酸。融点 52.8℃の無色の結晶。水に溶けてマレイン酸になる。アセトン，クロロホルム，ベンゼンなどに可溶。アルコールと反応してエステルを生じる。ディールス＝アルダー反応 (ジエン合成) の試薬として用いられる。プラスチック，医薬，農薬の合成原料となる。

出典　ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典