焼成リン肥(読み)ショウセイリンヒ

化学辞典 第2版 「焼成リン肥」の解説

焼成リン肥
ショウセイリンヒ
calcined phosphate fertilizer

リン鉱石をほかの原料(アルカリ,ケイ酸,リン酸など)とともに焼結し,フルオアパタイト構造を崩壊させて,リン酸分を溶解しやすくしたリン酸肥料総称.製品中にフッ素を含むものと含まないもの(わが国の焼成リン肥)がある.リン鉱石中ではリン酸カルシウムCa3(PO4)2とフッ素が結合し,水溶性,肥効性を低くしているが,このアパタイト構造を壊すとリン酸分が拘(く)溶性となり,過リン酸石灰と同じ肥効を示す.フッ素分は肥効を低くするので,ガスとして脱フッ素することもある.わが国では,鉱石にソーダ灰またはボウ硝(硫酸ナトリウム)リン酸液を加えて焼成する方式の工業化に成功し,“焼成リン肥”(狭義の)として知られている.中性ないし,塩基性肥料であるから,酸性土壌の多いわが国での発展が期待される.製法は,まず上記原料と鉱石との混合粉末にリン酸液を散布して造粒する.ついで回転がまで重油水蒸気とともに吹き込み(1350 ℃),フッ素0.1% 以下まで揮発させる.水で急冷すると,全リン酸の95% 以上が拘溶性になる.これを粉砕して製品とする.全P2O541%,拘溶性P2O539%,Ca2.8~2.5Na0.2~0.5(PO4)2.[別用語参照]化学肥料

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「焼成リン肥」の意味・わかりやすい解説

焼成リン肥
しょうせいりんぴ

溶融に至らない温度でリン鉱石を加熱処理(焼成)した種々のリン酸肥料の総称。リン鉱石中のリン酸は安定なフッ素リン灰石の構造をしており、そのままでは作物にはほとんど吸収、利用されないので、肥料として使用するためには酸を作用させたり熱したりして構造を破壊する必要がある。リン鉱石に各種原料(ソーダ灰=無水炭酸ナトリウム珪砂(けいさ)など)を混合、焼成して製造する。現在製造されている焼成リン肥のおもなものは、リン鉱石中のフッ素を他の化合物に変化させたレナニアリン肥と、リン鉱石中のフッ素を除去した脱フツリン酸三石灰の2種類である。水溶性リン酸を含まない緩効性の肥料で、2%のクエン酸水溶液に溶けるク溶性リン酸を34~38%含む。加工リン酸肥料および混合リン酸肥料の原料であり、飼料としても使用される。

[小山雄生]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「焼成リン肥」の意味・わかりやすい解説

焼成リン肥
しょうせいりんぴ
calcined phosphate

リン鉱石にケイ砂,硫酸ナトリウム,ソーダ灰,リン酸などの添加剤を加えて焼成した肥料。灰褐色の粉末で,水溶性リン酸を含まないやや遅効性の肥料で酸性土壌,火山灰土壌などに適している。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、和歌山県串本町の民間発射場「スペースポート紀伊」から打ち上げる。同社は契約から打ち上げまでの期間で世界最短を目指すとし、将来的には...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android